サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
長友+太田の左と、酒井1人の右。
三者三様のSBは再び武器となるか。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byGetty Images
posted2015/01/11 10:50
クラブでは苦しい時間を過ごす長友佑都だが、90分間衰えない運動量と左サイドの制圧力は健在。
最大の武器クロスを生かすためにも、運動量が必要。
周囲との連携に不安はない。「むしろやりやすいですよ」と、控えめな笑みがこぼれる。
「ブラジル戦もオーストラリア戦も(最終ラインの左センターバックが)森重だったので、FC東京と変わらない。森重だけじゃなくみんなもホントに気を利かせてくれるので、やりにくさはまったくない。むしろやりやすい。それはアジアカップでも変わらないし、連携はさらに良くなっていくでしょう。レベルの高い選手が揃っているので、やっぱり楽しいですよ」
太田の長所はクロスにある。彼自身も「武器だと思っている」と話し、「このチームには合わせてくれる選手がたくさんいる」と言葉に力を込める。
「守備のバランスを見つつも、チャンスがあれば前で勝負したい。オーストラリア戦ではオフサイドになった場面(武藤のヘッドにつながるクロス)しか上がれなかったので、もうちょっと運動量も必要だと思いますし、攻撃の部分で結果を残したい思いは強いです」
太田にイメージしてほしい「ひとつ内側のスペース」。
そのうえで、彼にはカットインからのプレーも求めたい。
アギーレの4-3-3は、攻撃の局面では3-4-3になる。両サイドバックは高い位置へ張り出し、両ウイングが中へ絞る。タッチライン際のスペースへ走り込み、クロスを供給するのはサイドバックの仕事になるが、試合を重ねることで日本代表のメカニズムは研究されていく。臨機応変なプレーが必要であり、太田ならカットインは選択肢のひとつだ。
レフティーの彼に、右足でシュートへ持ち込めとは言わない。しかしペナルティエリアに近いエリアの崩しに参加するだけでも、対戦相手にとってはさらにやっかいな存在になる。
イメージしてほしいのは、ドイツW杯のブラジル戦で、玉田圭司が決めたゴールだ。玉田の一撃を生み出したのは、三都主アレサンドロのラストパスだった。ブラジルにルーツを持つ左サイドバックは太田と同じレフティーで、タッチライン際だけでなくもうひとつ内側のスペースも使うことができていた。
太田が内側にプレーエリアを拡げることで、チームの攻撃パターンも増える。ひいては、長友をひとつ前のポジションで使うといった、新たなオプションの掘り起こしにつながるかもしれない。
出場機会が限られるとしても、太田には攻撃の局面で野心的にチャレンジしてほしい。直接フリーキックの場面では、自らボールをセットしてもいい。代表でもキッカーを務めるに値する精度を、彼の左足は備えている。