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10年後にしか分からないことがある。
'04年ドラフト、ダルビッシュの教訓。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2014/12/26 10:50
怪物として注目されつつも、当時はその性格を問題視する声も多かったダルビッシュ有。東北高からドラフト1位で日本ハム入り、日本を代表するピッチャーへと変身を遂げた。
高校卒は「化けたらでかい」。
ここまで踏み込んで見ないと選手の力は予見できないものなのか、と少しへこんだが、いずれにしても日本ハムは相当の決断をもってダルビッシュの大化けに期待して1巡目指名したことがわかる。
オリックスが自由枠で獲得した金子千尋はダルビッシュとは違う意味で球団に決断を強いた。ドラフト前に右ヒジの故障が発覚し、既に自由枠での獲得を決定していた球団内で「自由枠を外す、外さない」のひと悶着があったのだ。
1年目は故障の治療とリハビリに明け暮れ、100イニング以上の登板を果たすのは25歳になる4年目の'08年からだ。実働9年で通算90勝48敗、防御率2.69を挙げる自他ともに日本球界を代表する投手になるのだが、素質があれば1、2年のリハビリ期間を覚悟してでも獲得する価値がある、そういう指標をオリックスは打ち立てたと言っていい。
高校卒の「化けたらでかい」、故障を持ち越しても「いいと思ったら上位で指名する」、この年の教訓は以上2つ。一方で、前評判の高かった那須野巧(日本大→横浜自由枠)、野間口貴彦(シダックス→巨人自由枠)、一場靖弘(明治大→楽天自由枠)は大成しなかった。「人気は過信するな」も教訓の1つかもしれない。