リーガ・エスパニョーラ最前線BACK NUMBER
死者まで出たウルトラス同士の衝突。
リーガから過激派が消えない理由は?
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph byAFLO
posted2014/12/18 10:40
12月3日に行なわれた国王杯デポルティボ-マラガ戦の前に、亡くなったサポーターを追悼する黙祷が行なわれた。今度こそ暴力追放は達成されるのだろうか。
ウルトラスは政治的主張の場所にもなっている。
ウルトラスが存在し続けるもうひとつの理由は、サッカー以外の目的――政治的主張の場でもあることだ。これはスペインの暴力的サポーターの特徴であり、故にグループの中には弁護士もいれば警官もいる。そして、相容れない思想を持つ者とは容易に対立する。
アトレティコとデポルティーボの話に戻ると、両者の間に人殺しが起きるほどのライバル関係はない。現在の順位にしても片や3位、片や16位なのだから、アトレティコサポーターはデポルティーボを歯牙にもかけないのが普通だ。
が、ここに政治的思想が絡むと話は異なる。フレンテ・アトレティコは極右で、リアソール・ブルースは極左。不倶戴天の敵が相手となればいきり立つのも当然である。
乱闘には、試合には全く関係のない2部アルコルコンの「アルコル・フーリガンズ」とスポルティングの「ウルトラス・ボーイズ」、さらにはラージョの「ブカネロス」も加わっていた。ウルトラス・ボーイズは極左。アルコル・フーリガンズとブカネロスは極右。それぞれフレンテ・アトレティコとリアソール・ブルースを助太刀していたのだ。
協会、リーガ、クラブが今度こそ本気で暴力追放に動く。
11年ぶりに起きたサポーター間の殺人事件を受けて、政府のスポーツ上級審議会とスペインサッカー協会とリーガは、スタジアムからの暴力完全追放に乗り出した。まもなく明文化される新たなルールが施行されると、直接的にせよ間接的にせよ暴力的なグループとの関係を続けたクラブは、ポイントを剥奪される。場合によっては降格もあり得る。
スタジアムの特定の入り口には指紋および顔認識システムが設置され、外国人排斥や人種差別コールが起きたスタンドは閉鎖される。ビジター側サポーターの入場券は記名式となり、スタンドでの暴力行為は物理的なものだけでなく言葉によるものも報告され、ペナルティの対象となる。
一方でクラブ側も重い腰を上げ始めており、今回の当事者アトレティコやバレンシア、セルタ、2部サバデルなどはあらゆる暴力行為への厳格な対処を宣言した。ウルトラスのスタジアム入場禁止を含む暴力対策を早くから講じてきたバルサとマドリーに続く者がようやく現れたわけだ。
スポーツ上級審議会の会長は、今季中に暴力的サポーターの8割をスタジアムから排除するつもりでいる。易しいことではないが、クラブの全面的な協力があれば不可能ではないだろう。