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羽生結弦、復活過程で得た「財産」。
なぜフリー直後に舌を出したのか?
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2014/12/15 11:30
日本男子史上初のグランプリファイナル連覇をなしとげた羽生結弦。
羽生が過去にあまり見せてこなかった一面。
そして今大会改めて実感させられたのは、逆境にあるとき、追い込まれたように見えるときこそ力を出す、力を増す、そんな羽生の特性だった。
もちろん体調はかなり戻っていただろうし、その間は練習を積むことができたのだろう。とはいえ、普通は1週間も休めば感覚は容易には戻らない、と選手やコーチに何度か聞いたことがある。それを考えれば、羽生のリカバリーの早いは際立っている。
さらに、勝負への強いこだわりも力を出すための源になっているだろう。
ただ同時に、今回のグランプリファイナルでは、羽生がこれまであまり見せてこなかった一面も、演技に強く作用したのではないだろうか。
フリーで印象的な場面があった。ジャンプの転倒のあとのステップで、笑みを浮かべたように見えたのだ。そこには、滑ること、演じることの喜びがあるようだった。
「スケートができることが、いちばんの幸せです」
試合後のコメントにも喜びがあり、それは逆に負傷後の苦しい心中をうかがわせるものでもあった。
練習できない、思うように滑れなかった日々。
中国杯からNHK杯までの日々、練習できない、練習を再開しても思うように滑ることができないという状態は、スケーターとして苦しい時間だったはずだ。それこそ、手足を縛られたようなものだったかもしれない。
ハードな練習を徐々に取り入れ、自らのパフォーマンスと向き合えるようになるまで、滑れない苦しみは続いただろう。バルセロナに入り、公式練習で調子を取り戻してきていることを実感したときには、すでに心中に喜びがあったように思える。
そしてショートプログラム、フリーと続く中でもその自信はふくらみ、さらに演技を高みへ押し上げたのではなかったか。