フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
2連覇・羽生結弦の飽くなき挑戦。
今季最高得点も「まだ完璧じゃない」。
posted2014/12/15 16:30
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph by
Getty Images
何という強さだろう。これが五輪チャンピオンの実力というものか。唖然としたくなるほどパワフルな、羽生結弦のフリーだった。
「オペラ座の怪人」のメロディに合わせて、羽生結弦は冒頭の4回転サルコウをあっさり着氷。ひょっとすると3回転だったのだろうかと思うほど、簡単に降りた。続いて4回転のトウループも軸のぶれがまったくなく、着氷に素晴らしい流れがある。羽生が次々と降りていくジャンプは、彼がやるとまるで何の苦もなくできる、降りて当たり前のようなものに見えた。最後の3ルッツではすとんと転倒したのもご愛嬌に見えるほど、圧巻の演技であった。
復活の羽生、歴代第2位の高得点。
結局4回転を2度、3回転を合計7回降りてフリー194.08で今シーズンの世界最高スコアを更新。歴代でもパトリック・チャンに次ぐ史上2番目の高さである。
「ユヅル、今日以上の滑りは可能だと思うか。最後のルッツを転んだのは、あれを降りていたらもう破る記録がなくなってしまうから、わざとではなかったのですか?」
記者会見ではフランスの記者が冗談めかしてそう質問したほどである。
「これでカムバックと考えていいでしょうか」
そう聞かれると、羽生はこう答えた。
「いえ、実際にはまだ4回転トウループを後半に入れていない。そんな中でも完璧に近い演技が出来たのは自分にとって大きな進歩だとは思います。でも完璧な状態に戻ってきたとは言えない。NHK杯からの一週間で、ここまで自分が思い切って滑れるように戻してくれたのは、周りの方々のおかげだと改めて思いました」
「迷惑かけたんだなって、反省しました」
中国杯で起きた接触事故の記憶はいまだに生々しいが、あれがわずか一カ月ほど前のことだとは信じられない。
「あの時は日本に帰ってみたら、こんなにもワイドショーに取り上げられているのかと驚いた。新聞にも『羽生流血!』ってあって、まあ流血だよな、と(苦笑)。びっくりしました。一番びっくりしたのは、(フィギュア関係者だけではなく)本当にすべての競技、あるいは医療に関わる方々の意見が飛び交っていたこと。ただすごく反省しました。迷惑をすごくかけたんだなって」
だが、わずかな期間で不死鳥のように蘇り、GPファイナル2連覇を果たした。
「自分自身がこうやって体を最後まで存分に使いできることができる幸せを感じました。たくさんの方々の支え、チーム関係者の方々、たくさんの応援メッセージをくださったファンの方々、世界中のファンの方々にありがとうと伝えたい。そういう気持ちになった1日でした」
20歳の誕生日を迎えたばかりのチャンピオンは、そう喜びを表現した。