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羽生結弦、復活過程で得た「財産」。
なぜフリー直後に舌を出したのか?
posted2014/12/15 11:30
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
AFLO
圧勝だった。
12月12・13日にスペイン・バルセロナで行なわれたフィギュアスケートのグランプリファイナル男子シングルで、羽生結弦が優勝した。昨シーズンの福岡大会に続いての連覇である。
2位のハビエル・フェルナンデス(スペイン)につけた点差は実に34.26。ショートプログラムの94.08点、フリーの194.08点、合計288.16点、そのすべてが今シーズンの世界最高得点と、他を圧倒しての文句なしの優勝だった。
中国杯の衝突事故による負傷の影響に苦しんだNHK杯から約2週間を経ての今大会、羽生がどこまで調子を取り戻しているかに、まず関心は集まった。
公式練習で復調の気配を感じさせた羽生が、心配を払拭したのは、ショートプログラムの冒頭の4回転トウループだった。最初の大技を、羽生は本来の力強さで跳んで成功させてみせたのだ。
後半のトリプルルッツ-トリプルトウループこそやや強引さがあって転倒したものの、復調を確信させる演技で1位に立った。
「跳んだ瞬間に、きた! って思いました」
フリーでは、最初に予定している2つの4回転ジャンプ、サルコウ、トウループともに、大きな加点を得た。とりわけ、サルコウはこれまでにないほど完成度が高いものだった。
「サルコウは、跳んだ瞬間に、きた! って思いました」
羽生自身も、会心のジャンプを演技後にこう振り返った。
後半トリプルルッツこそ転倒したものの、フリーの自己ベストを更新し、歴代でもパトリック・チャン(カナダ)に次ぐ2位の得点をたたき出し、優勝を決めた。
羽生はNHK杯後、練習でかなり厳しく追い込んできたという。体の回復あってこそだが、練習の中では、NHK杯前にはできなかった通し練習も行なった。思うように練習できなかった状態から劇的に回復し、充実した毎日を過ごせたことが、グランプリファイナルの出来につながっていた。