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香川とドルトムントの“ジレンマ”。
「縦の速さ」への固執が精度を奪う。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2014/12/05 11:00
熱烈な歓迎を受けてドルトムントへ復帰した香川真司だったが、その熱狂は徐々に冷めつつある。香川が信頼を取り戻すための時間は、いかほど残されているのだろうか。
ムヒタリアンとともに、批判に晒される香川。
再び先のシーンを振り返ってみる。
ロイスを負傷で欠くいま、ムヒタリアンはチームで最も「仕掛ける」能力が高い選手である。彼の能力があれば、先の2つのシーンでもペナルティエリア深くまでドリブルでえぐって折り返すことができたのではないだろうか。それが成功すれば、あとは味方が押し込むだけという場面を作れたはずだったのだが、そうはならなかった。
加えて、今季ムヒタリアンはリーグ戦で一度もゴールを決めていないことについても批判に晒されている。現在のドルトムントの不振を象徴する選手、と言ってもいいだろう。
もっとも、批判を受けているのは香川も同じ。ブンデス優勝をもたらした2011-2012シーズンと比較され、「かつての香川ではない」と言われているのだ。
香川もまた11試合に出場して、1ゴールしか決められていない。
期限ギリギリでの移籍によってドルトムントに最も遅く加わった香川は、良くも悪くも現在のチームのペースとは異なるリズムでプレーしている。
つまり、「シュートを焦りすぎる」というチーム全体の問題には巻き込まれていないものの、逆にハイペースなサッカーの中で決定的な働きを見せられないでいる。
香川「もう一つ信頼されていない」
例えば、味方からのリターンパスを受けられない理由は、香川自身もこう分析していた。
「もう一つ信頼されていないというか、(自分の方を)見られていないところはある。そのためにも自分の結果を残さないといけないし、自分がボールを持てばチャンスになるというのを結果で示していかないと」
その一方で、先日はこうも話していた。
「僕自身の課題としては、グイッとシュートまで行けるように毎回意識しているのですが、なかなかシュートまで持ち込めなかったりするところ。レベルアップを図るためにも、そこでグイッと行ける能力をつけないといけないのかなと感じています。同じ状況でも、特に両サイドの選手は最後の一歩をいける力がありますし」
結果を残さなければ、ボールは返ってこない。しかし、結果を残そうとして強引にゴールに迫るだけでは、チームとしての問題は解決しない。チームと香川の間には、厄介なジレンマが横たわっているのだ。