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日本アイスホッケーを“背負った”男。
福藤豊が32歳にして海を渡る「遠謀」。 

text by

菊地慶剛

菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi

PROFILE

photograph byYoshitaka Kikuchi

posted2014/12/01 16:30

日本アイスホッケーを“背負った”男。福藤豊が32歳にして海を渡る「遠謀」。<Number Web> photograph by Yoshitaka Kikuchi

2014年9月19日に開幕したデンマークリーグのエスビアウ・エナジーでプレーする福藤豊。第6戦では初の完封勝利をおさめるなど活躍を見せている。

「日本の連盟が本気で五輪を目指していると感じられない」

 レベルの高いところで成長したいというのは福藤に限らず、アスリートの本能だろう。しかし今回の海外再挑戦は、単に福藤個人の向上心に留まらず、彼はもっと遠くの目的を見据えていた。

「僕自身、オリンピックに出たいとか世界選手権でいい結果を残してトップ・ディビジョンに上がりたいとか、これまで口にしてきました。そのために何が必要かと考えた時に、高いレベルのリーグで自分がレベルアップすることが絶対的に必要になってくると思っていました。ただ単に口で言うんじゃなくて自分の行動で示したいというのがありました。

 このままじゃオリンピックに絶対いけないですよね。かといって日本のアイスホッケー連盟が、本気になってそこを目指しているというのも感じられない。それならば選手個人で考えて行動するしかないですよね。

 僕はできると思ってやっていますし、できないと思ってしまったらそこまでです。僕自身、年齢のことを考えれば残された時間も限られてくる。いつまでも日本代表に入っていられるわけではないので常に危機感は持っていますし、選ばれている間は精一杯の努力はしたいです」

日本でも飛び級制度を実現する可能性は?

 個人のレベルアップに留まらず、日本のアイスホッケー界の行く末にも思いを馳せる福藤。デンマークでは技術面だけでなく、選手の育成にも目を向けている。

「ここでは15歳や16歳の選手でもトップリーグに出場しています。日本でも飛び級させていかないといい選手は育たないと思うんですよ。正直、そこは大きな差だと感じました。

 クラブチームがしっかりしていて、トップに僕らがいる。そこにU-20、U-17とジュニアチームがあってトップを目指す環境がある。アジアリーグ自体がそういう考えになってこないと難しいと思います。

 ここで見ていても、決してジュニアにいいコーチがいるというわけではない。選手を引退した人が、ボランティアでやっているような感じです。それでも選手が育つのは、やはりレベルの高い試合をするという環境なんだと思います。今チームに17歳の選手がいますが、下のリーグではトップラインでプレーしているんです。日本でも、高校や大学の試合を優先させながらも、アジアリーグがいい選手と契約して出場させてもいいと思うんです。

 ただ、今のアジアリーグや日本アイスホッケー連盟が何を必要としているのかは、自分はわからないですし、どう自分の経験や考えを伝えていけばいいかもわかっていないです。今それを模索している最中です」

【次ページ】 福藤はまさにアイスホッケー界のカズ、中田。

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