Jをめぐる冒険BACK NUMBER
「CBでは世界で通じないと痛感した」
今野泰幸、ボランチで再び世界へ。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byAFLO
posted2014/11/22 08:00
久々の代表復帰となったオーストラリア戦では、本田圭佑のコーナーキックからヘディングで先制点を決めた今野泰幸。ボランチとしての再出発は上々だ。
「センターバックでは世界で通じないと痛感した」
6月のW杯では、2戦目のギリシャ戦と3戦目のコロンビア戦でピッチに立っている。今野にとってこれが2度目のW杯だが、先発出場はこれが初めて。待ち望んだ瞬間だったが、突きつけられた現実は、厳しかった。
ギリシャが守りを固めてきた2戦目はともかく、勝利が義務付けられたコロンビア戦でカウンターの餌食となってしまった。現在ドルトムントでプレーするアドリアン・ラモスのスピードについて行けず、PKまで献上した。
「日本は勝たなければならなかったから、両サイドバックが高い位置を取っていた。そうなると、僕らセンターバックは相手の2トップと2対2の状態。世界のFWはスピードがケタ外れだし、ルーズなボールでも収められるし、太刀打ちできなかった。センターバックでは世界で通じないことを痛感した。自分のセンターバックとしての限界を感じました。今はボランチに戻って、またチャレンジしていきたいと思ってます」
存在価値の証明が、いつしか重荷になっていた。
もともとボランチだった今野がセンターバックにコンバートされたのは、FC東京に所属していた'09年のことだ。当初は困惑していた今野も「新しいセンターバック像を築きたい」と前向きに取り組んだ。
翌年、アルベルト・ザッケローニが日本代表監督に就任すると、代表でもセンターバックに指名される。'05年の初選出以降、ボランチでは3番手、4番手の選手だった今野が、代表でレギュラーとして起用され続けるのは、初めてのことだった。
決して背の高くない今野がセンターバックとして重宝される理由は、彼自身が一番よく理解していた。背が低いからこそ空中戦に持ち込まれないようにディフェンスラインを高く保ち、ボランチ出身だからこそ攻撃の起点にもなる。それができなければ、本職の選手たちを差し置いて、自分が起用される意味がない――。
だが、自分の存在価値を証明するためのトライが、いつしか重荷になっていたのかもしれない。昨夏のコンフェデレーションズカップ以降、失点もかさんだことから、日本代表では「責任を感じる」という言葉が多くなっていた。