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ザックの理想、アギーレの現実路線。
内田が示唆した真の“継続性”とは?
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byAFLO
posted2014/11/19 11:00
オーストラリアを相手にゴールを決めた今野泰幸と岡崎慎司。ホンジュラス戦と合わせ、ザックジャパンの主力が、その所以を見せ付けることになった。
選手の進言より前に、監督がシステム変更を指示。
ともあれ現実として今目の前で起きているのは、日本がマイボールの際にビルドアップに苦しみ、リズムに乗れていないということ。今やるべきことはその問題への対処だ。
潮目が変わったのは前半35分ごろだった。アンカーの長谷部とインサイドハーフの遠藤保仁がピッチで話し合い、ダブルボランチにした方がいいのではないかとベンチに進言しようとしていたときだった。アギーレ監督は指と大きな声で、4-3-3から4-2-3-1へのシステム変更を指示した。中盤のスペースを埋め、前線からプレッシャーを掛けやすくするためだ。
すると日本は後半、水を得た魚のように連動性を見せはじめる。ベンチで見ていた前半、「オーストラリアは蹴ってくると思っていたからビックリした」と言う今野泰幸は、遠藤と交代でピッチに立つと、後半5分には自らボールを奪ってドリブルで持ち上がり、香川真司に折り返しのラストパス。あっという間にチャンスを作った。
日本はその後も敵陣深くまで攻め入ってCKを獲得し、後半16分には本田の右CKから今野がヘディングを決めて先制。その7分後にも左CKの崩れから岡崎が華麗なヒールシュートを決め、2-0とリードを広げた。
終了間際に天敵のティム・ケーヒルに1点を返されたのは反省材料だが、終わってみれば2-1の勝利。交代枠は6あったが、使ったのは日本が3でオーストラリアは4という引き締まった試合をしっかりと制した。
ザッケローニとは真逆の「現実主義者」。
アギーレジャパンはこれで年内の6試合をすべて終了したことになる。アギーレ監督は「この試合では勝つことが目的だった。その目的は果たすことができた」と満足そうに言った。そして、「来日した当初からアジア杯は勝たないといけない大会だと言い続けてきたが、それは変わっていない」と続けた。
オーストラリア戦を終えた今、これまでおぼろげにしかつかめなかった監督としてのアギーレ像がいくつか浮かび上がっている。
その最大の要素は、勝利という目的から逆算する「現実主義者」だということだ。理想に向かって積み上げていくタイプだったアルベルト・ザッケローニ前監督とはアプローチが異なっている。