MLB東奔西走BACK NUMBER
“ジャイアンツ時代”を築いた名GM。
MLBの潮流は、資金力よりも「育成」?
posted2014/11/02 10:40
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph by
Getty Images
今年のワールドシリーズは、第7戦までもつれ込む激戦の末ジャイアンツが制した。
一方プレーオフ8連勝と快進撃を続けたロイヤルズだったが、29年ぶりの悲願を達成できず、ワールドシリーズ制覇は夢に終わった。同チーム所属の青木宣親選手も悔しい思いをしたに違いない。
プレーオフ期間の青木の打率をみると、地区シリーズ.333、リーグ優勝シリーズ.273、ワールドシリーズ.071と下降線を辿り、ワールドシリーズは不振からついに3試合先発から外されてしまった。
「プレーオフはそれぞれのシリーズが新しいシーズンに入るようなもの」
多くの選手や監督がそう表現するとおり、短期間ながらプレーオフを通じて好調を維持する難しさを、青木の数字が結果的に証明してしまった形だ。
実は今年のプレーオフでは、すべてのシリーズで第1戦を勝ったチームが勝ち上がっている。やはり短期決戦は、先勝して勢いを掴んだチームが有利ということなのだろう。
ジャイアンツは連覇こそ逃しているものの、2010年以来、1年おきに3度目のワールドシリーズ制覇。いまや完全に“ジャイアンツ時代”を築き上げている。
「年俸総額=チームの強さ」ではない。
しかしジャイアンツは、チーム最高年俸のマット・ケイン投手でさえ、メジャー全体では18位であるように、決して突出したスター選手がいるわけではない。
過去に優勝した年の、チームの年俸総額のメジャー順位をみても、2010年が9位、2012年が8位、2014年は6位と、決してお金の力でスター選手を集めているわけではないことがわかる。
3度のワールドシリーズ制覇は、選手を含め監督、コーチに至るまで“適材適所”の人事を行なったブライアン・サビーンGMの功績といっていいだろう。
この潮流は、ジャイアンツに限ったことではない。
ここ10年間のワールドシリーズに出場したチームにおける年俸総額を比較すれば明らかだ。
●過去10年間、ワールドシリーズ出場チームの年俸総額
2014 ジャイアンツ(6位) ロイヤルズ(18位)
2013 レッドソックス(4位) カージナルス(11位)
2012 ジャイアンツ(8位) タイガース(5位)
2011 カージナルス(11位) レンジャース(13位)
2010 ジャイアンツ(9位) レンジャース(27位)
2009 ヤンキース(1位) フィリーズ(7位)
2008 フィリーズ(12位) レイズ(29位)
2007 レッドソックス(2位) ロッキーズ(25位)
2006 カージナルス(11位) タイガース(14位)
2005 ホワイトソックス(13位) アストロズ(12位)
※資料元:USAトゥデー紙
表を見てもらえば一目瞭然のように、この10年間で年俸総額ベスト5位以内のチームでワールドシリーズに進出したのは20チーム中4チーム(2013年レッドソックス、2012年タイガース、2009年ヤンキース、2007年レッドソックス)だけ。
現在の潮流では潤沢な予算をかけて大物実力選手を集めることではなく、限られた予算内でどれだけ結束したチームを作り上げるかということが重要視されているのだ。