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マッドバムの快挙と混戦の終結。
~ワールドシリーズで見せた完封劇~ 

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芝山幹郎

芝山幹郎Mikio Shibayama

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photograph byGetty Images

posted2014/10/31 16:30

マッドバムの快挙と混戦の終結。~ワールドシリーズで見せた完封劇~<Number Web> photograph by Getty Images

ロイヤルズとのワールドシリーズ第5戦で完封劇を見せたマディソン・バムガーナー。この試合は初球ストライク率80.6%で無四球と完璧な投球で、三塁を踏ませなかった。

 仁王立ちという言葉は古すぎるだろうか。

 195cmの身長、105kgの体重。サイズも大きいが、マウンド上の存在感が図抜けている。しかも横手投げ。左打者から見ると、ボールが背中に向かって飛んでくる感じだろう。そういえばかつては、怪人ランディ・ジョンソンの横手投げが対戦する左打者を震え上がらせていたものだ。ロイヤルズの打者が腰を引いて空振りを重ねる姿を見ていると、全盛期の「ビッグ・ユニット」を思い出してしまう。

 いうまでもないが、私はマディソン・バムガーナーのことを述べようとしている。名前の頭を取って「マッドバム」と呼ぶメディアも増えてきた。直訳すれば「狂気のホームレス」。敬意を込めて訳せば「鬼才バム」。とにかく、2014年ポストシーズンのバムガーナーは圧倒的な活躍を見せた。あんなに世間を騒がせたロイヤルズ旋風が、彼に立ちはだかられて、ぱたりと無風状態に陥ってしまったのだ。たとえは悪いが、蛇ににらまれた蛙。ロイヤルズはバムガーナーひとりにやられてしまった、といっても過言ではない。

 バムガーナーは、2014年のワールドシリーズで第1戦と第5戦に先発し、2勝をあげた。さらに最終戦では5回からロングリリーフに立ち、68球を投げた。合計すると投球回数が21イニングスで、自責点は1(第5戦は完封)。2010年のワールドシリーズ初先発(対レンジャーズ。8回0封)と2012年シリーズの対タイガース戦(7回0封)を加えると、ワールドシリーズでの通算成績は36イニングスを投げて4勝0敗。防御率0.25は(投球回数25イニングス以上では)史上1位にランクされる。

球史に残るポストシーズンの投球。

 ワールドシリーズだけではない。ポストシーズン全体を振り返っても、バムガーナーは球史に残る成績を残している。

 まず、6試合に先発した投手は、カート・シリング(2001年)、クリス・カーペンター(2011年)と並んで3人しかいない。52回3分の2の投球回数は、シリングの48回3分の1を抜いて史上最多だ。

 しかもバムガーナーは、先発6試合のうち2試合で完封劇を演じた。かつてはクリスティ・マシューソン(1905年、ジャイアンツ)のようにワールドシリーズ3先発3完封の偉業を達成した投手もいたが、投手の分業制が進み、ポストシーズンの試合数が増えた現在、この種のドラマはめったに見られなくなってしまった。近ごろでは、ジョシュ・ベケット(マーリンズ)が2003年に2完封を記録して以来の快挙だ。

【次ページ】 1903年からのポストシーズン男たちをおさらい。

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マディソン・バムガーナー
サンフランシスコ・ジャイアンツ

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