スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
破産寸前からの劇的な復活。
バレンシアは第2のアトレティコか。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byManuel Queimadelos Alonso/Getty Images
posted2014/10/07 10:40
チームを再建中のヌーノ監督(写真中央)。強面とあごひげ、筋肉質な体躯が特徴の指揮官には、今後も要注目だ。
昨季王者を破ってなお感じさせる「伸びしろ」。
7節アトレティコ戦は今季のバレンシアの強さが凝縮された一戦だった。
キックオフ直後からエンジン全開のバレンシアイレブンと満員のスタンドから圧力を受け、アトレティコは完全に受け身に回り、6分に信じられないミスからオウンゴールを献上。その後も勢い任せに押し込んだバレンシアは13分までに3-0とリードを広げた。
その後は態勢を立て直したアトレティコに一転して押し込まれる展開が続くも、ファウルを厭わない肉弾戦に持ち込むことで相手にプレーのリズムを作らせず、1失点に抑えて逃げ切ったのである。
常に主導権を握れるレベルにはまだない。だが今季のバレンシアは、そのことを自覚した上で勝つために自分たちができることを個々が献身的に全うし、非常に手堅く、しぶとく泥臭く勝ち点を重ねている。
その戦いぶりは、シメオネ率いるアトレティコと重なるところが多い。会長から強化責任者、監督、選手、そしてファンまで、みなが1つの方向へ向かって歩みを揃えているところもそうだ。
現時点ではまだ、アトレティコが至った高みにまで辿り着けるかどうかは分からない。だが少なくともこれまでの戦いを見る限り、そのポテンシャルは十分にあるように思える。
なにせ発足間もないチームにはまだまだ伸びしろがある。ケガで出遅れている目玉補強のアルバロ・ネグレドはまだデビューすらしていないのだから。