スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
破産寸前からの劇的な復活。
バレンシアは第2のアトレティコか。
posted2014/10/07 10:40
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph by
Manuel Queimadelos Alonso/Getty Images
期待してはいたものの、ここまでやるとは思わなかった。7節終えて5勝2分の勝ち点17、首位バルセロナと勝ち点2差の2位につけているバレンシアのことだ。
ラファエル・ベニテス指揮下の'03-'04シーズンにリーガ・エスパニョーラとUEFAカップの2冠を獲得して以降、バレンシアは破産寸前まで陥った財政難のため主力選手の放出が相次ぎ、国内外での競争力を失ってきた。
それでもウナイ・エメリが率いた'09-'10、'10-'11、'11-'12年の3シーズンはバルセロナ、レアル・マドリーに次ぐリーグ3位の立場を守ってきたのだが、ここ2年は半年ごとに監督が代わる不安定な状況が続き、とうとう昨季は9年ぶりに欧州カップ戦への出場権を獲得できずに終わっている。
突然の復活の陰に、2人の男。
そして今夏、クラブはシンガポールの大富豪ピーター・リムへの売却手続きを進める傍ら、ジェレミー・マテュー、フアン・ベルナトら主力数人を含む19選手を大量放出。代わりに20代前半の若手有望株を中心に、11人の新戦力と4人のカンテラーノを加えたものの、再び監督を代えてゼロからスタートしたチームが形になるまでにはある程度の時間を要するものと思われた。
それが蓋を開けてみれば見事なスタートダッシュを見せ、5節終了時には総得点の差ながら'11-'12シーズン以来となる首位に立ち、7節ではそれまで無敗の昨季王者アトレティコ・マドリーまで3-1で破ってしまった。
強いバレンシアはなぜ、突然に復活したのか。その鍵を握る男が2人いる。1人は昨年11月にゼネラルスポーツマネージャーに就任したフランシスコ・ルフェテ。もう1人は今季からチームを率いるヌーノ・エスピリト・サント監督だ。
ルフェテは'01-'06年までバレンシアで活躍した、ベニテス時代の主力の1人だ。'11年にエルクレスで引退した後に監督のライセンスを取得し、昨年6月に下部組織のマネージャーとしてバレンシアに戻ってきた。そして同11月、ブラウリオ・バスケス前SDの解任に伴い、トップを含めたチーム強化の最高責任者となったのだ。