プレミアリーグの時間BACK NUMBER
サウサンプトンが降格候補から躍進。
クーマンの「夢」は実現するか。
posted2014/10/04 11:00
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph by
Tomoki Momozono
ファンではない人間が肩入れしたくなるようなチーム、というのが例年1つは現れる。
近年も、2011-2012シーズンには、プレミアリーグ「最貧」でありながら、「最上級」のパスサッカーで昇格1年目を中位で終えたスウォンジーがいた。翌シーズンには、やはり「持たざる者」の一員だったウィガンが、全国規模の声援を背に受けながら、マンチェスター・シティを下す大番狂わせでFAカップ優勝を決めている。昨季の主役は、予想に反して24年ぶりのリーグ優勝に迫って国民を沸かせたリバプールだった。
そして、今季はサウサンプトンだ。
昨季、昇格2年目にして8位につけた成功の代償として、富と名声に勝るビッグクラブによる「即戦力狩り」のターゲットにされた移籍市場での姿は痛々しかった。得点源だったリッキー・ランバート、チャンス供給源だったアダム・ララーナ、守備の要だったデヤン・ロブレンは、揃ってリバプールに、10代にしてSBとしてレギュラーを張ったルーク・ショーは、マンチェスター・ユナイテッドに奪われた。プレミアで初のフルシーズンをトップ10内で終えたマウリシオ・ポチェッティーノ監督は、トッテナムにヘッドハントされた。
あまりにも多い戦力流出に、降格危機が囁かれた。
仮に昨季プレミア王者のマンCが同じ目に遭ったとしよう。攻撃陣からはセルヒオ・アグエロとダビド・シルバ、守備陣からはバンサン・コンパニとパブロ・サバレタが抜けたチームが、マヌエル・ペジェグリーニ監督をも失う。
となれば、いかに国内随一の選手層を誇るマンCでも、優勝候補の筆頭格として今季を迎えることは難しかっただろう。選手層では比較にもならないサウサンプトンの降格が危惧されたのは、メディアの誇張ではなく当然のことと思われた。
ところがそのサウサンプトンは、4勝1敗1引分けの2位で9月を終えた。もちろん、開幕から僅か1カ月半での成績であり、順位は一時的なものでしかない。しかし、開幕6戦で11得点4失点と、毎試合2得点弱を上げる一方で、失点を135分間に1点のペースに抑える攻守のバランスの良さは、大幅な戦力入れ替えを余儀なくされたチームとしては評価に値する。