Jをめぐる冒険BACK NUMBER
U-21代表のシャイな主将、大島僚太。
アジア大会で巻く腕章が変えるもの。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byAFLO
posted2014/09/25 10:40
J1の首位を争う川崎フロンターレでも、スタメンの座を手にしている大島僚太。U-21では完全な中心選手として、アジアのトップ、そしてリオ五輪を目指している。
シャイでおとなしい大島がなぜ選ばれたのか。
所属する川崎フロンターレとは戦術が違うため、Jリーグでのようにボールに頻繁に触って軽快にパスを散らしているわけではないが、それでもゲームをコントロールし、攻撃面で大きな役割を担っているのが、この小柄なプレーメーカーであるのは間違いない。
もっとも、そうした雄弁なプレーとは裏腹に、ピッチ外の大島はおとなしく、シャイな性格で、人前で話すのも得意なほうではない。ピッチ内でも声を張り上げたり、手を叩いて鼓舞したりするタイプではなく、長谷部誠や宮本恒靖のような「これぞ、キャプテン」といったイメージからは程遠い。
そんな彼をなぜ、キャプテンに任命したのか――。
このチームには、湘南ベルマーレでキャプテンを務めた経験のある遠藤航もいるが、手倉森監督にはある思惑があった。
「静岡学園で育ち、フロンターレでプレーしてきて、ボールを握ることに対して彼はものすごい自信と知識がある。ただキャプテンにしなかったら、自分のプレーに集中してその知識をアウトプットしないだろうなと。攻撃のバリエーションを付けるうえで、僚太には自分の考えをチームに積極的に落とし込んでいってほしいと思っているんだ」
アトランタ五輪で、前園真聖がキャプテンだった理由。
その話を聞いて思い出したのは、'96年のアトランタ五輪代表で、西野朗監督が前園真聖をキャプテンに指名したエピソードだった。
パーソナリティを考えれば、リーダーシップがあり、人望の厚い服部年宏や小倉隆史のほうが、よほどキャプテンとして相応しい。だが、放っておけば自分のプレーにしか興味を示さないところのある前園にキャプテンの重責を与えることで、チームを第一に考えざるを得ないようにしたという。
責任感の芽生えた前園がその後、神懸かり的なプレーでチームを28年ぶりのオリンピック出場へと導いたストーリーは、日本サッカーの歴史における重要な1ページだ。