プレミアリーグの時間BACK NUMBER
ルーニーの主将就任は契機となるか。
新生マンUの新シーズンは前途多難。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2014/08/23 10:40
昨季は不調のマンUで孤軍奮闘したものの、チームはまさかの7位でCLどころかELをも逃したルーニー。英国の、そしてマンUの至宝は主将としてどんな働きを見せるのだろうか。
3年目のファンペルシか、11年目のルーニーか。
指名を行なったファンハールも「然るべき決断」だと言っている。何かと抜け目のない名将の頭には、オランダ人監督によるオランダ人FWのキャプテン指名は短絡的すぎるという考えもよぎったのかもしれない。クラブでの指名よりも「名誉」と感じるであろう代表でキャプテンに選ばれたファンペルシは、マンUで指名を受けなかったからといって落胆することもないだろう。
マンUでのキャリアは、移籍3年目のファンペルシに対し、ルーニーは11年目。ベテラン勢が抜けた今季、ルーニーはチーム随一の経験値の持ち主でもある。おまけに昨季はチーム最多のゴールとアシストを記録していたとなれば、ルーニーを選ばない理由はない。
さて、なるべくしてなった新キャプテンだが、プレミアリーグでの初陣を白星で飾ることはできなかった。8月16日のスウォンジー戦(1-2)、マンUはホームで“勝つべくして勝つ”ことができなかった。
但しキャプテンとしてのルーニーを評価すれば、10点満点で8点は与えられる。ジェシー・リンガードとタイラー・ブラケットのプレミア公式戦デビュー組を含む先発イレブンの中でも、リーダーとしての「声」と「足」は最後まで止まらなかった。
後半早々に1度は追いついた自らのゴールは、それがたとえオーバーヘッドによるものでなくとも、チームと観衆を鼓舞するには十分だった。その後も、惜しくもポストを叩いたFKで逆転ゴールにも迫った。そのFK自体、ルーニー自身が奪ったものだ。
試合後のコメントも、「マンUが負ければ必要以上に騒がれても仕方はない。気持ちを切り替えて、次節が開幕戦のつもりで勝利を目指す」と、キャプテンとして言うべきことを言っている。
高い守備の意識と能力が裏目に。
問題は、より直接的にチームの勝敗を左右するストライカーとしての出来だ。ファンペルシがコンディション不足で欠場した一戦だけに、ルーニーの責任は重かった。評価は、前述のゴールを加味しても6点が精一杯。それでもチーム内では最高レベルの評価に相当するが、新システムの3-4-1-2が脅威不足に終わった責任の一端はルーニーにもある。
相手ボール時のマンUは、5-3-1-1へと陣形を変えて守っていた。この変形自体に問題はない。だが、ウィングバック2名が最終ラインに下がった後、中盤に加わるべきはルーニーではなかった。この点は、FWのハビエル・エルナンデスとトップ下のフアン・マタを、守備の意識と能力で上回るルーニーの持ち味が災いしたと言える。