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ルーニーの主将就任は契機となるか。
新生マンUの新シーズンは前途多難。
posted2014/08/23 10:40
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph by
Getty Images
「然るべき時がきた」と、ウェイン・ルーニーは言った。
去る8月12日に公表された、マンチェスター・ユナイテッドでのキャプテン就任を受けての一言だ。内心は「やっと願いが叶った」との思いだったに違いない。
昨季の新監督、デイビッド・モイーズが、就任2年目にはルーニーのキャプテン昇格を考えていたという噂は本人の耳にも入っていただろう。残念ながらモイーズに2年目はなかったが、キャプテンだったネマニャ・ビディッチは、昨季3月の発表通りに今夏の契約満了を以てインテル・ミラノへと去った。
新たにルイス・ファンハールの監督就任が決まった5月後半、ルーニーは「キャプテンの人選は監督しだい」としながらも、「興味はある」とコメント。その2カ月後のプレシーズン中には、「もちろん、キャプテンになりたいさ」と公言してもいる。副キャプテンだったパトリス・エブラもユベントスへと移籍していた。
巷では、新キャプテンの最有力候補はロビン・ファンペルシと見られていた。31歳のエースはファンハールと同じオランダ人。しかも、その指揮官の指名による代表キャプテンとして、母国をW杯ブラジル大会3位に導いたばかりだ。
同時に、ルーニーのキャプテン就任を嫌がる声もファンの間にあった。少数派ではあったが、彼らはルーニーの忠誠心を疑問視した。ルーニーには、近年に2度移籍を志願した過去がある。結果は、2度とも年俸アップを伴う残留。クラブを脅して待遇改善を図ったとみなされているのだ。キャプテンを「名誉職」と捉えれば、不適当とする意見にも一理ある。
「言葉」と「態度」という2つのリーダーの適性。
しかしチームの「牽引役」と考えれば、ルーニーの適性に疑いの余地はない。リーダーシップを発揮する手段には「言葉」と「態度」の2つがあるが、どちらの意味でもルーニーは適職。周囲に発破をかけながら、自らのプレーでもチームを鼓舞できる。
ピッチ上のルーニーが、後方にラインの押し上げを要求して叫ぶ姿は、元右SBで現解説者のギャリー・ネビルや今夏にQPR入りしたCBのリオ・ファーディナンドなど、先輩格のDF陣がキャプテンの腕章を巻いていた試合でも見られた。勝利への意欲とチームへの献身は、悪夢のリーグ7位に終わった昨季も相変わらず。メディアで「闘っているのはルーニーだけ」と言われた試合は幾度もあった。