オリンピックへの道BACK NUMBER
王者を追うレスリングの新星たち。
20歳、登坂絵莉は攻守万能型!?
posted2014/08/02 10:30
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
AFLO
昨年、レスリングは無事オリンピックでの継続が決まった。
日本がお家芸として誇りを持ってきた競技でもあり、特にアテネ五輪から採用された女子は、オリンピックの4階級で好成績を残してきた。48kg級は伊調千春がアテネ、北京、小原日登美がロンドン、55kg級の吉田沙保里、63kg級の伊調馨、72kg級の浜口京子がそれぞれ3大会通じて日本代表として出場している。
出場するのみならず、吉田、伊調馨は3連覇を果たすなど、まぎれもなくそれぞれの階級の第一人者と呼ぶにふさわしい選手たちであり、だから日本代表の座を譲ることもなかった。
しかし華々しい活躍の一方で、将来を危惧する声も生まれていた。1つには、彼女たち第一人者を追う存在が手薄なこと。吉田、伊調、浜口はともに30代。むろん、年齢で限界が決まるわけではないが、いつかは退くときが来る。だが、とって代わるであろうと期待を集める選手がなかなか出てこない、という懸念がある。
増える五輪階級も日本にとっては課題の1つ。
オリンピックの階級分けも、リオデジャネイロ五輪からは6階級に増えることが決まっている。そのため、新たに実施される階級でも従来の階級同様の結果をあげることができるか、という課題も存在する。7階級で実施されてきた世界選手権では、五輪での実施階級以外は総じてやや劣った成績であったこともあり、増えた階級で選手を育てていけるかが心配されてきた。
そうした中で、少しずつ若い世代が台頭してきている。
その筆頭と言えるのが48kg級の登坂絵莉(とうさか えり)である。現在、20歳だ。
ロンドン五輪前の代表合宿中、日本代表の栄和人監督は登坂についてこう語っていた。
「吉田と言えばタックル、となるけれど登坂はね、全体にいいんです。攻めも守りも、どちらもバランスよくできるし、練習を一生懸命やるのもいいですね」
登坂は着実に、その期待に応えてきた。全日本選抜選手権では'12年に初優勝すると今年6月の大会まで3連覇を達成。昨年9月の世界選手権では初優勝し、今秋の世界選手権代表にも選ばれている。