オリンピックへの道BACK NUMBER
王者を追うレスリングの新星たち。
20歳、登坂絵莉は攻守万能型!?
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2014/08/02 10:30
今年はワールドカップでも優勝を果たし、日本国内に限らず世界でも48kg級のニュースターと騒がれるようになった登坂絵莉。
初めての世界選手権で銀メダルを獲得するも……。
登坂にとって転機があったとすれば、ロンドン五輪で金メダルを獲得した小原が引退したことだ。すでに引退していた伊調千春、さらに小原といなくなったことで、48kg級は空位の状態となった。それは「チャンス」が生まれたということを意味した。
そして'12年9月、世界選手権代表に初めて選ばれて銀メダルを獲得。初めての世界の舞台であることを考えれば、十分評価できる成績だったと言えるかもしれない。ただ本人は、決勝で微妙な判定の末敗れたこともあって、ひたすら悔しがっていた。
同時に、チャンピオンになるにはまだ足りない部分があることも自覚した。パワーのなさを痛感した登坂は、それ以来筋力トレーニングにも精力的に取り組んできた。
その結果は早くも出始めており、昨年の世界選手権で優勝、'12年冬以降の主要国内大会のすべてでも優勝を果たすなど、この階級ではもはや国内に敵無しとされるまでになったのだ。
絶対王者・吉田沙保里を追う者も。
他の階級でも、現王者たちを追う選手たちが少しずつ現れてきている。例えば、昨年12月の全日本選手権55kg級で吉田と接戦を演じた21歳の浜田千穂もその1人だ。
第一人者がいなくなったことが飛躍へのきっかけになった登坂の歩みを考えれば、新たにオリンピックで実施されることが決まった階級もまた、大きな「チャンス」があると言える。それらの階級の選手たちの心持ちも、必然、変化してきたはずだ。オリンピックという目標がクリアになれば、より意識も高まるからだ。
第一人者を追う、そして新階級で飛躍を期す選手たちの成長が、レスリング女子の歴史を継いでいくことになる。