ブラジルW杯通信BACK NUMBER
日本代表専属シェフ・西芳照。
厨房から見た“もう一つのW杯”。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTsutomu Takasu
posted2014/07/29 10:30
2004年から日本代表のために料理を作り続けてきた西芳照さん。ジーコ、オシム、岡田、ザッケローニ監督らの代表とともに、西さんも戦い続けてきた10年間だった。
試合前日にはウナギ、疲労回復には青魚。
――コンフェデで一度、ブラジルを経験していることも大きかったのでは?
「ブラジルには、基本的に魚を持ち込むことができません。昨年は現地で手配したのですが、試合前日に食べる蒲焼き用のウナギや疲労回復に必要な栄養素を含んでいる青魚が手に入らず、困りました。ウナギの代用で穴子を使いましたけど、ウナギを楽しみにしていた選手のみなさんには申し訳なかった。ブラジルは川魚が中心で、調達が難しい。なので、今回はかなり早めに動いて準備して、サンマやウナギを食べていただくことができました」
――食事を提供するうえで気をつけた点というのは?
「なにぶん長期の合宿になるので、やっぱり食事ぐらいはリラックスしてもらいたい。それに肉、野菜、魚とバランス良く出して安心して栄養のあるものをしっかり食べていただきたいというのがありました。飽きないように同じ調理法、同じ味を避けて、毎日違うメニューにするようには気をつけました」
――イトゥでの最初のオフの日に出した“中華セット”はかなり好評だったみたいですね。
「イトゥで初めてラーメンを出そうと決めた日で、どうせならギョーザ、チャーハンも出してセットにしちゃえ、と。餃子は思ったよりも人気がありましたね。
どうやって選手のみなさんの食欲を掻き立てればいいかなと思って、和食ではうどんを冷やしとろろにする日をつくって、カッパ巻きをセットにしてみたりもしました」
人気だったのはパンケーキと「ポンデケージョ」。
――今回、メニューの一番人気というのは?
「料理はまんべんなく食べてもらいました。意外なところでは、パンケーキですかね。飛ぶようになくなっていました」
――それは意外ですね(笑)。
「事前合宿地のクリアウォーターのホテルで現地のパティシエがつくってくれたんですけど、バターがいっぱい入っていて確かにおいしい。人気があるので、一応、レシピをもらっておいたんです。イトゥでもブラジル人のシェフがつくってくれたんですけど、みんなアメリカで食べたイメージが強いのか、あんまり食べない。そこでもらったレシピどおりにつくってもらったら、またみんな食べるようになりました。
ほかに人気だったのは、ポンデケージョ。ブラジルで一般的なチーズ入りのパンですね。冷めると硬くなってしまうのでベーキングパウダーを入れてみたら、冷めても十分おいしく食べられるようになって……選手のみなさんも食事を済ませて部屋に戻る際、おやつ代わりとして持っていってましたね」