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日本代表専属シェフ・西芳照。
厨房から見た“もう一つのW杯”。 

text by

二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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photograph byTsutomu Takasu

posted2014/07/29 10:30

日本代表専属シェフ・西芳照。厨房から見た“もう一つのW杯”。<Number Web> photograph by Tsutomu Takasu

2004年から日本代表のために料理を作り続けてきた西芳照さん。ジーコ、オシム、岡田、ザッケローニ監督らの代表とともに、西さんも戦い続けてきた10年間だった。

朝5時から始まる西シェフの一日。

 西の一日は朝5時から始まる。

 朝、昼、夜の三食を用意するだけでなく、ホテルの管理栄養士や現地のシェフたちとの打ち合わせをして、空いている時間は材料とにらめっこしながら先の献立てを考える。

 食事の席では決まって選手たちの目の前で「ライブクッキング」を行なっている。牛肉のステーキを焼き、パスタを調理するなどして目と耳で楽しませ、鼻を刺激する。これも「リラックス」に一役買っている。

 試合になれば2日前に開催地に乗り込み、現地ホテルのシェフに指示を出していかなければならない。食材の手配を含め、こちらも事前の準備が大切になる。代表チーム総務の津村氏と綿密な準備をしてきたからこそ、トラブルに巻き込まれることもなかった。

 また、試合当日になると、とにかくご飯をよく使う。三食に加えて、試合前の軽食や試合後に食べるおにぎりも用意しなければならないからだ。西は、持ってきた炊飯器よりも鍋で炊くほうがおいしいと感じると、わざわざ鍋で炊くようにした。これもすべて「おいしく食べてもらいたい」とする西の愛情だと言える。

コンフェデの経験を生かしてトラブルを回避。

――試合になると西さんだけが現地に赴いて、ホテルのシェフに指示を出しながら料理をつくらなければなりません。でも今回は、トラブルもなかったようですね。

「昨年、コンフェデで一度来て大体のことが分かっていたので、それが大きかったと思います。(コートジボワール戦の会場になった)レシフェは、コンフェデのイタリア戦で使用したホテルと一緒でした。去年、炊飯器でご飯を炊こうとしたらコンセントが抜けていることに後で気づいて冷や汗をかいた苦い思い出がこのホテルにはあります。でも今回そういう意味では特に大きな問題はありませんでした。津村さんはじめ、携わってくれた方々のおかげだと思っています」

――試合はどこでご覧になっていたのですか?

「レシフェ、ナタールでは試合後にホテルに戻ってから食べるカレーの準備があったため、ホテルに残ってテレビで見ていました。クイアバは試合後、そのままイトゥに移動するので私もスタジアムで応援することができました」

【次ページ】 今回のW杯は、専属シェフとしても「集大成」。

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