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W杯前の闘莉王の言葉が頭をよぎる。
本当の「日本のサッカー」とは何か?
text by
西川結城Yuki Nishikawa
photograph byGetty Images
posted2014/07/11 11:55
ザッケローニに率いられた4年間の冒険は、W杯のGL敗退で終わりを告げた。次期監督の人選でもパスサッカーの継続が条件としてあがっているが、「日本のサッカー」とは何なのかについて今こそ議論が必要だ。
「日本人ほど“耐える”ことに関して強い国民はいない」
今思えば、闘莉王は誰よりも謙虚だった。
「日本は'98年のフランス大会で3連敗して、日韓大会でベスト16に入って、またドイツ大会で躓いて。そして南アフリカ大会では決してベストな結果ではなかったけど、ある程度のところ(ベスト16)までは行けた。
これを見てわかることは、日本の実力はまだ安定していない。だから、まずは勝つ試合をする以前に負けない試合をすることを考えないといけない。それができて、次に勝つ試合を目指す。その順番がようやく前回のW杯でできつつあった。それなのにたった4年後の大会で一気に、強気に攻めていく試合をしようとしている。
でもそうではないと思う。まずは守備の意識を持って、負けないことを考える。そこに前回よりも攻撃的な要素を加える。これがあるべき順番。何試合もそれを繰り返して、世界から『日本はしぶといな、負けないな』と思われるようにしないといけない」
そしてここからの言葉に、今後の日本が大切にすべきポイントがあった。
「俺はね、日本人の“国民性”をもっと大事にしないといけないと思っている。例えば東日本大震災でも、日本人は大きな混乱にならずに皆が手を取り合って協力し合った。その姿に、世界中の人々が拍手を送った。
世界を見渡しても、“耐える”ことに関してこんなに強い国民はいない。でもその分、ラテンの国の人たちより一つのミスや失敗に対する落胆も大きい。だから一度失点しただけでガクッとなることもある。だからこそ、先に点を与えないためにしっかりしぶとく戦う、というやり方もありだと俺は思っている」
闘莉王は、日本人には集団になってピンチをしのぐリバウンドメンタリティが備えられている、と感じているのだ。
「サッカー以外の世界では、日本人の忍耐力はいいこと」
隣で話を聞いていた楢崎正剛も、闘莉王の言葉を引き取ってこう続けた。
「確かに日本人には、そのほうが合っているのかもしれない。でも今の日本サッカーの風潮では、そうやって戦うことがどこか後ろ向きだとか、カッコ悪いみたいな感じに取られてしまう。
でもそれは他の世界では、みんな日本人の忍耐力をいいこととして考えている。モノ作りや職人さんの世界とかは、まさにそういうレベルの話。でもサッカーは、どうしても南米や欧州の戦い方に憧れてしまうところがある。そろそろ日本人に合ったサッカーを、見つけないといけない」