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<フットボーラーのパフォーマンスを支えるアミノ酸>
宮間あや 「“サッカー体力”を武器に再び頂点へ」
posted2014/07/17 11:00
text by
細江克弥Katsuya Hosoe
photograph by
J.LEAGUE PHOTOS
常に中心では小柄ながらも抜群の存在感を誇る彼女が躍動し続ける。
その原動力は、毎日の体調管理に欠かさないルーティーンにあった。
サッカーの「技術」なら、おそらく世界の女性で最も上手い。写真撮影に臨む彼女にそう伝えると、「いやいや、全然ですよ」と笑いながら否定した。
では、「技術」をもう少し細分化して「プレースキックの精度」についてはどうか。体力が底を突く試合終盤、しかし宮間のプレースキックはその精度が落ちない。
「う~ん……まあ、でも、ボールが止まってますからね。やっぱり、ボールが動いていたら思ったとおりに蹴るのは難しいですよ。でも、止まっていれば大丈夫……かな」
「ただ走るだけの能力って、あまり意味がない」
サッカー経験がある人なら、きっと分かる。たとえ止まっているボールでも、疲労困憊の状態で正確に蹴るのは簡単ではない。'94年の世界大会ではイタリアの至宝ロベルト・バッジョが、'11-'12シーズンのCLではクリスティアーノ・ロナウドとリオネル・メッシがともにPKを失敗し、サッカーの基本であるキックの難しさと奥深さを再認識させた。
となると宮間には、並外れたスタミナがあるのだろうか。しかしどこまでも謙虚な彼女は、その仮説もやんわりと否定する。
「いやあ……普通ですよ。ホントに普通。ただ走るだけの能力って、あまり意味がないと思っちゃうんです。だから、体力の配分も考えていません」
3つの仮説を相次いで否定されたが、食い下がって質問を続けた。彼女にあるのは、おそらく、“サッカー体力”だ。長距離走は苦手でも、サッカーなら無心で走れる人がいる。
「あ、それはたぶんあります(笑)。うん、それなら大丈夫ですね」
ようやく「なるほど」と合点がいった。宮間には“サッカー体力”がある。だから配分を考えずに走り続けられる。スタミナが底を突く試合終盤でも、正確なプレースキックで決定機を演出することができる。
「ただ、特に最近はコンディショニングを気にするようになりました。『いかに早く回復させるか』は、やっぱりすごく重要ですよね」