ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
松山英樹が挑む全米OPの難コース。
全米1位のある数字と、本当の武器。
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byAP/AFLO
posted2014/06/11 10:50
通算13アンダーで並んだケビン・ナ(アメリカ)とのプレーオフを制し、日本人4人目となる米ツアー優勝を果たした松山。
一見寛容に見えるが、少しでも逸れれば……。
選手にとって寛容なセッティングのようでもあるが、そう一筋縄でいくはずがない。ラフを極めて短くしたことは、戦いをより過酷なものにするスパイスになる。
パインハーストはもともと、砂地のネイティブエリアや、針金のように硬く細長い雑草、ワイヤーグラスが、フェアウェイから近いところにある。左右に大きく曲がったボールは、刈り込まれたラフでは止まらず、この厄介な土地へと行きついてしまう。それはグリーン周りも同様で、通常のバンカーやラフとは違う、不慣れなアプローチを強いられることも多い。今回のセッティングは、コースのこの特徴を活かしたものだ。
また、パインハーストNO.2の設計者ドナルド・ロスのデザインしたグリーンは、傾斜が大きく、総じて中央部分が盛り上がっているのが特徴的。それゆえデービスは「グリーンは、少なくとも紙の上に描かれているよりも遥かに小さいはずだ」と分析する。
グリーン幅は平均37ヤード前後というが、その数字だけを信用するのはあまりに短絡的。ピンポジションに対して要求された地点にショットを運べなければ、ボールはたちまちグリーンから滑り落ちる。残るのは、打ち上げで距離感の掴みづらい難度の高いアプローチ。簡単にスコアが増えていく要因になる。
忍耐力、対応力、そして“運”が結果を左右する。
試されるのは、ミス直後の忍耐力と対応力。ただ、デービスはショットの行方に、“運”も大きく左右することを示唆している。
「ボールはある時には砂地の足跡の上に転がるかもしれないし、ある時にはワイヤーグラスの下に行ってしまう時もあるだろう。雑草地帯、松葉の上、松ぼっくりの手前……フェアウェイを外した選手は様々なピンチに陥る。しかしボールのポジションが6インチ違うだけでグリーンを狙えたり、そうでなかったりする。それこそが、自然を相手にプレーする我々のゲームの本質だ」