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全米OPの注目は「フィル&ヒデキ」?
2人の対照的な“気負い”対応法。
posted2014/06/12 10:50
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph by
Getty Images
男子ゴルフのメジャー大会、全米オープンは12日からノースカロライナ州のパインハースト・リゾートで開催される。
今大会の最大の注目は、米国の国民的スター、フィル・ミケルソン。米メディアはこぞって「オンリー・フィル(ミケルソンのみが注目)」と書き立てている。
大会出場選手は、世界中から集結した総勢156名。今年4月に2度目のマスターズ制覇を果たしたバッバ・ワトソン、2週前の米ツアー、メモリアル・トーナメントでルーキーにして初優勝を挙げたばかりの松山英樹など、注目選手はミケルソン以外にもいるだろうと言いたくなるかもしれない。が、米メディアがミケルソンにこだわる理由は多々ある。
ミケルソンが今大会で優勝したらメジャー4冠のグランドスラムが達成される。ジーン・サラゼンからタイガー・ウッズまで、史上まだ5人しかいないグランドスラマーにミケルソンが加わることができるかどうか。
ミケルソンのメジャー惜敗の歴史は全米で始まった。
が、ミケルソンが特別に注目を浴びているもっと大きな理由は、そんな未来の記録より、過去の歴史だ。このパインハーストで開催された'99年の全米オープンで、ミケルソンはペイン・スチュワートと激しい優勝争いを演じた末、1打差で惜敗した。
あのときミケルソンは愛妻エイミーが初産を控えており、「彼女の身に何かが起こったら、たとえ優勝争いの真っ只中にいても僕は棄権して彼女の下へ駆け付ける」と宣言。まだスマホが存在もしなかったあのとき、ミケルソンは近くのショップで買ってきたポケベルをゴルフバッグに忍ばせてプレーした。
結果的にポケベルは鳴らず、しかしミケルソンは敗れ、ウイニングパットを沈めた直後のスチュワートは当時29歳だったミケルソンの頭をその場で鷲掴みにしながら興奮混じりにこう言った。
「キミはもうすぐ父親になるんだ。素晴らしいことだ。いい父親になれよ」
それが、ミケルソンのメジャー惜敗の歴史の始まりとなり、その4カ月後にスチュワートが飛行機事故で他界し、そしてミケルソンはいまだに全米オープン優勝を悲願に掲げ続けている。