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メッシとロナウドに迫る「唯一」の男。
スアレス、その異常なまでの万能性。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2014/05/23 10:30
ウルグアイでも、リバプールでも圧倒的なペースでゴールを量産しつづけるスアレス。今季もプレミアでイエローカード6枚と危うさは相変わらずだが、得点の魅力は圧倒的だ。
あらゆるバリエーションで4ゴールを奪った「発表会」。
そのスアレスを、ロジャーズは「9.5番」と形容する。飽くなき得点意欲とゴール前での決定力の高さは、純粋なセンターFWに引けを取らない。おまけに、フィニッシュのレパートリーが豊富ときている。4ゴールを決めた昨年12月のノリッチ戦(5-1)は、スアレスの発表会のようだった。
1点目は、約35mの距離から右足でロングシュート。2点目は、ゴール前で跳ねたCKを左足で引っかけるようにしてネットを揺らした。3点目は、相手MFを頭越しのリフティングでかわしてからゴール右下隅に。締め括りは、カーブをかけたゴール左上隅への25mFKだった。
相棒に21得点を取らせるチャンスメイクも超一流。
それだけの決定力を持ちながら、チャンスメイクにも長けているのだから対戦相手は頭が痛い。前線でコンビを組むダニエル・スタリッジが、リーグ2位の21得点でイングランド代表の1トップに急成長した背景には、スアレスのアシスト能力がある。
例えば、今年3月のカーディフ戦(6-3)。スアレスは今季3度目、リバプールでは'11年1月末の移籍以来6度目となるハットトリックを達成する一方で、コースもスピードも完璧なクロスで、スタリッジのゴールを演出している。
翌月のマンチェスター・シティ戦(3-2)、空中戦で相手CBに競り勝ち、相手SBのボディチェックを跳ね返してから放ったラヒム・スターリングへのスルーパスも、万能なスアレスらしいアシストだった。
改めて振り返れば、プレミアでの最終戦になるかとさえ思われた昨春のチェルシー戦でさえ、スアレスは1ゴール1アシストを決めた。右サイドからの折返しを、ダイレクトでスタリッジの進行方向に届けたアシスト。ポストプレー後に足を止めず、相手CB2名の隙間をすり抜けてクロスに頭で合わせたゴール。いずれも、トップクラスのFWならではの仕事ぶりだった。