スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
2人の偉大な“カピタン”が退団。
バルサが遂に認めた「1つの終わり」。
posted2014/05/22 16:30
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph by
FC Barcelona via Getty Images
アトレティコ・マドリーとのリーガ・エスパニョーラ最終節を2日後に控えた5月15日。カンプノウの脇に新設されたホールにて、今季限りの退団が決まっているカルレス・プジョルの退団セレモニーが行なわれた。
「自分がバルサの選手として行う最後の会見にこれだけ多くの人が集まってくれたことに感動している。今は自分にとって難しい時だけど、友人たちが言う通り、何とか楽しめるよう努めているよ。あまり話すことは好きじゃないんだけど、今日は自分の心境を説明しなければならない。
数カ月前に言った通り、膝の状態が良くない。やれることは全てやってきた。だから6月30日をもってバルサの選手としての時代は終わりを迎える。解決策を探してきたけどまだ見つかっていない。でも俺は諦めない。挑戦し続けるよ。今はプレーしなければいけない義務から解放されたしね」
Tシャツ一枚のラフな恰好で壇上に座り、600人が入るホールを一杯に埋めた関係者と報道陣に向かってそう語りはじめたプジョルは、その後クラブ関係者やチームメート、スタッフ、スペインサッカー協会関係者、そしてファンへ向けた感謝の気持ちを丁寧に伝えた。そして最後に、亡くなった父ジョセップ、アントニオ・オリベラス、ミキ・ロケ、ルイス・アラゴネス、ティト・ビラノバらの名を挙げ、「自分にとって1つの時代が終わる。新たに始まる時代も同じように楽しみたいと思う。ビスカ、バルサ(バルサ万歳)」と言って挨拶を終えた。
常に若い選手の規範であり、チームメイトに尊敬された。
毎試合、誰よりも走り、戦い、叫び続ける闘将“プジ”は、テクニシャン揃いのバルサにおいて唯一無二の存在だった。何よりその強烈なキャプテンシーとプロフェッショナルな言動は、カンテラ時代から若い選手の模範であり続けてきた。
2つ年下ながらほぼ同時期にトップチームに昇格し、共にキャプテンとしてチームを支えてきたシャビ・エルナンデスはこの日、同じ壇上で友人に次のようなメッセージを送っている。
「ウェンブリーでのチャンピオンズリーグ決勝を制した直後のことは決して忘れない。僅か数分しかプレーできなかった君にトロフィーを掲げるよう言った際、君は“いやシャビ、このトロフィーはアビダルが掲げるべきだ”と言ったんだ。あの時、君を尊敬したよ。
新入りの選手やケガ明けの選手、出場機会の少ないチームメートのことを常に気遣い、励まし、アドバイスを与える。それこそキャプテンなんだってね。君ほどのプロフェッショナルを見たことがない。将来君とこのクラブで1つのプロジェクトを共有できたら素晴らしいことだ。君はバルサの財産であり、バルサは君を必要としている。ありがとうファキール(=イスラムの修行者)、君は本当に偉大だ」