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ハミルトン、バトン、ベッテル……。
セナの療法士と王者たちが語るセナ。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byAFLO
posted2014/05/05 10:40
サンパウロ郊外にあるモルンビーの丘の墓地でセナは安らかに眠る。
セナ亡き後も、レベラーはF1界に残った。
私たち以上に、セナとの絆が深かったレベラー。その悲しみもまた深かった。しかし、セナ亡き後も、レベラーはフィジオとしての仕事をF1界で続ける決心をした。
「あの日のことは、いまも忘れることができない。でも、人はいずれ死ぬ。それは誰にも変えることができない運命だ。大切なことは生きている間に、何をするか。私ができることは、フィジオとしてドライバーたちを支えること。そして、F1の世界にいる間はアイルトンとともに過ごして得た経験をそのドライバーたちに話し、活かすことだと思っている。
だから、『アイルトンのことについて、何かコメントをください』というメディアからのリクエストにも喜んで答えるよ。そうすることで、アイルトンは多くの人々の心の中で、永遠に生き続けるんだから」
悲しみを乗り越え、レースを続けた者はレベラーだけではない。彼らの存在がF1を危機的状況から救い、そして20年間、ひとりの犠牲者も出さずにF1が続いている原動力となっている。
ハミルトン「少しでもその領域に近づきたい」
セナを語ることは、セナを忘れないためだけでない。セナの死を決して無駄にしてはならないという思いが、そこにはある。その思いは、5月1日を前に、セナについてコメントしてくれた5人のチャンピオンたちも同じだろう。
「レースを始める前から、アイルトンは僕のヒーローだった。子どものころから、彼の本やビデオはほとんどすべて持っていたよ。レースを始めたのも、もちろん彼にあこがれていたから。
だから、アイルトンが亡くなったときは、とてもショックだった。家族にもその感情を見せたくなかったから、ひとりで静かな場所に行って泣いたよ。僕にとって、アイルトンはいまでも尊敬する偉大な先輩。ドライビングテクニックだけでなく、彼のレースへのアプローチは、いまだに学ぶべき点が多くある。アイルトンを超えることはできなくても、少しでもその領域に近づきたいと願っている」(ルイス・ハミルトン)