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アンジャッシュ渡部建が見たセンバツ。
龍谷大平安、投手と監督の信頼関係。 

text by

田口元義

田口元義Genki Taguchi

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2014/04/15 10:40

アンジャッシュ渡部建が見たセンバツ。龍谷大平安、投手と監督の信頼関係。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

センバツ決勝戦の8回、1アウト満塁のピンチを乗り越えた中田竜次投手は「自分が行くしかないと思っていた。気持ちで投げた」とコメントしている。

大ピンチで不調のエースがマウンドに……。

 4対2と龍谷大平安の2点リードで迎えた8回。1アウト満塁と長打が出れば逆転されてしまう大ピンチの場面で、3番手の犬塚君がカウント2ボールと窮地に追い込まれてしまいます。ここで、龍谷大平安ベンチはエースの中田君をマウンドに送るわけですが、カウントの途中での継投など滅多にないことだし、何より決勝戦の大舞台。もし、逆転されるようなことがあれば、「なんで、あんな中途半端な場面でピッチャーを代えたんだ!」と非難されかねません。

 でも、原田監督に迷いはありませんでした。試合後の監督の談話などを聞くと、交代の裏付けになるエピソードがあったのです。

 実は中田君、準決勝の時点で肩に違和感を感じていたこともあって、「投げられません」と監督に状況を説明し、事前に登板を回避していたそうなんです。それなのに、この絶体絶命の場面で原田監督は、「胴上げ投手にならんでいいのか? 背番号1を背負っているんやから気持ちで投げてこい!」と中田君を激励したというのです。

 これこそが信頼関係ではありませんか! 原田監督の「諦めないぞ!」という強い姿勢が、選手、スタンドで応援する生徒やOB、ファンのみなさんにも乗り移った。僕はそう感じてなりませんでした。

龍谷大平安が教えてくれた、高校野球の奥深さ。

 中田君は、三振、ピッチャーゴロで相手を打ち取り大ピンチを切り抜けると、9回も無失点に抑え、見事胴上げ投手に。監督の想いに応えました。

 センバツでは1大会で4人の投手を起用した学校は今回の龍谷大平安を含めて3校ありますが、決勝戦だけで見れば、4人による継投は史上初だったそうです。龍谷大平安が優勝できた理由は数多く存在するでしょうけど、こういった記録からも、僕は、投手陣と原田監督との信頼関係が一番大きかったんじゃないかな、と思っています。

 初のセンバツ制覇を成し遂げた原田監督は、試合後のお立ち台で嬉しそうに言いました。

「いち平安ファンとして嬉しいです!」

 この言葉を聞いて、OBでもない僕までなんだか嬉しい気持ちになりました。

 高校野球の奥深さを教えてくれた龍谷大平安には感謝しています。この勢いで春夏連覇を目指して頑張ってください!

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