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『レッドブル・エアレース』が復活!
ニッポンのエース・室屋義秀の挑戦。
text by
田邊雅之Masayuki Tanabe
photograph bySebastian Marko, Jorg Mitter, Predrag Vuckovic/ Red Bull Content Pool
posted2014/04/11 10:40
再開されたレッドブル・エアレース。アブダビ大会でタイムアタックを行なう室屋義秀の雄姿。
鍵となる「ヒューマン・ファクター」とは?
心に抱いた疑問を説く手がかりを与えてくれたのは、2010年の世界王者、イギリス人のポール・ボノムとの会話だった。2月28日の大会1日目。予選で58秒192をマークし、全体の2位で決勝進出を決めたボノムに、レコーダーのマイクを向ける。
――まずは日本のエアレース・ファンのために、このコースの特徴と攻略法を教えてもらえますか?
「アブダビのコースは、三つのセクターから構成されている。最初はスタートラインを超えて、3つのパイロンを縫うように抜けていくパート。二つ目のパートは、垂直に大きく旋回する個所だ。ここは今回のエアレースで、コースを攻略するための鍵になると思う。タイムを稼ごうと思うなら水平に近いライン取りをすればいいことになるけれど、あまりに水平に回ってしまうと、次のゲートを通過できなくなる危険性が出てくる。かといって(垂直ターンの小回りを小さくするために)操縦桿を引きすぎれば、今度は10Gを超えてしまい、やはり失格になるからね。最後の3番目のセクターは、各ゲートが2秒ごとに迫ってくるから、とにかくクイックで正確な操縦をしていくことが求められる。そこさえクリアーすれば、最終パイロンを回ってくるのは楽なもんだよ」
最新型の機体が有利ではあるが……。
――ポイントは第2セクターだと。でも実際問題、タイムを削り取ってマージンを稼いでいくのは難しいんじゃないでしょうか? コースは短めですし、ましてやエンジンとプロペラは、同一になったわけですから。
「たしかにね。厳密に言うなら、エンジンとプロペラはワンメークになったにせよ、各パイロットの機体(飛行機)には若干の差があるから、最新型の機体に乗っているパイロットの方が有利になる。
でもそれ以上に重要なのは、自分自身を完璧にコントロールしながら飛び続けることなんだ。むろん正しいコース取りをするのは、どのレースでも肝になるけれど、アブダビはレイアウトがシンプルな分だけ、ベストのフライトラインを見抜いた上で、自分が選んだコースを完璧にトレースできるかどうかがなおさら問われてくる」
――つまり『ヒューマン・ファクター(個々のパイロットの技量)』こそが、一番大切な要素になると?
「そう。それは今回の選手権シリーズの、一番の特徴であるとも思うしね」
他方、室屋は59秒858を記録し、12人中9位で予選を突破。タイムアタックの直前に強い横風が吹き始めた不運を考えれば、決して悪いタイムではないといえる。現に室屋も久々に臨んだ予選、そして新たなエアレースに好感触を抱いていた。
「思ったよりは機体のタイム差が少ないなというのが、第一印象ですね。新しい機体を使っているパイロットに比べると、コンマ5秒から1秒くらいの差はあるので、そこの部分はかなりリスクを冒してチャレンジしていかなければなりませんが、このタイム差ならば、ベスト8に食い込んでいくチャンスは十分残されている。明日の決勝には、おもしろい感じで臨めると思います」