Number ExBACK NUMBER
『レッドブル・エアレース』が復活!
ニッポンのエース・室屋義秀の挑戦。
text by
田邊雅之Masayuki Tanabe
photograph bySebastian Marko, Jorg Mitter, Predrag Vuckovic/ Red Bull Content Pool
posted2014/04/11 10:40
再開されたレッドブル・エアレース。アブダビ大会でタイムアタックを行なう室屋義秀の雄姿。
アブダビで得た確かな手応えと、室屋の新たな決意。
レースを終えたパイロット達が、遠方の滑走路から湾内を船に乗って戻ってくる。この間、上空ではジェット機のアクロバットチームによる編隊飛行が行なわれ、人々の目を楽しませた。レッドブルのスポーツイベントらしい、気の利いたプレゼンテーションだ。
表彰式とノンアルコールのジュースを使ったシャンパンファイト、そして記者会見を終えたボノムに声をかける。レース前に取材をしていたからだろう、こちらの姿に気がつくと、すぐに右手を差し出してきた。
――まさかあの土壇場で、あんなタイムを出してくるとは思いませんでした。
「決勝を戦いながら、チームの連中と一緒にずっとベストのフライトラインを探し続けていたんだ。それがうまくハマったというわけさ」
――具体的には、どのセクターのどのあたりのコース取りを変えたんですか?
「そりゃあ教えられないよ。そんな事をしたら、他の連中に真似をされてしまうからね」
――じゃあ、僕なりの勝手な解釈を。今日のレースでは、2位になったハンネスが例の垂直ターンのところでフラットなコース取りをして、一気にタイムを伸ばしたと記憶しています。あそこから各パイロットがコース取りを微妙に変えた印象を受けますが、あなたも彼のフライトを参考にしたのではないですか?
「いや、それはない。彼が飛んでいる時は、僕はもう上空で待機していたわけだから。僕は彼のフライトラインを見ていないんだ」
新しいレギュレーションは、十分にスリリングだった。
――では、せめてヒントだけでも教えてもらえませんか?(笑)
「ごめん無理だ。それは企業秘密だよ(笑)」
――わかりました。秘密の答えは、次回以降の取材の楽しみに取っておきます。いずれにしても今回のレースは機体ではなくパイロット、あなたが言っていた「ヒューマン・ファクター」がクローズアップされた大会になりましたね。
「うん。そう言えると思う。新しいチャンピオンシップは、これくらいスリリングで面白いってことが、みんなにもわかってもらえたんじゃないかな」
茶目っ気たっぷりにウィンクをしながら、ボノムがプレスルームを去っていく。と同時に、今度は室屋の会見が始まった。