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「斜めのパス」とビルドアップ力。
ペップで知る、サッカーの新観戦術。 

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木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

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posted2014/03/31 10:30

「斜めのパス」とビルドアップ力。ペップで知る、サッカーの新観戦術。<Number Web> photograph by AFLO

グアルディオラ監督率いるバイエルン・ミュンヘンは、25日に行なわれたブンデスリーガ第27節でヘルタ・ベルリンを下し、史上最速で優勝を決めた。

縦方向、ゴール前へのパスは最大の警戒を受ける。

 守備者にとって最も防ぐべきはゴール前のエリアに危険なパスを出されることで、縦方向のパスを最も警戒している。当然プレスに関しても、縦方向のパスルートを切りながらかけるのが基本だ。つまり元々、守備側は縦パスに対して耐性の強い守り方をしている。

 それに対して、斜め方向のショートパスは、ベクトルの変化があるので守備側は対応が難しくなる。たとえば右斜め前で受けた選手が、素早く左斜め前に出すと、相手は方向転換を迫られ、完全に振り回される。相手が走る方向を闘牛士のようにいなし続けると、相手は嫌になってボールを追う気力が萎え、ついには足が止まってしまう。

 よく考えてみれば、サッカーの基本をしっかりと理解していたら「斜めのパス」はあらためて強調するまでもないことなのかもしれない。

 サッカーのポジショニングの基礎は、ボール保持者に対して2つ以上のパスコースを作ることだ。つまり、ピッチ上に「三角形」をどれだけ作るかが鍵になる。三角形が作られていたら、斜めにパスを出すのは当然の帰結だ。

 しかし、ときに最も大切な基本というのは、当たり前すぎて強調されず、その実践がぼやけてしまうことがある。だからペップは練習で口に出して強調するし、ビディッチも試合中に意識するのだろう。

クライフが辺の短い三角形にこだわった理由。

 言い換えれば、出し手が斜めにパスを出す意識と、受け手が斜めにパスコースを作る意識はワンセットである。両者がそろって初めて、相手のプレスをかいくぐることができる。

 他の例をあげると、ヨハン・クライフは斜め方向にパスコースを作ることに関して、世界中の誰よりもこだわっていた監督だ。サイドバックとウイングが30mもの距離を離れてプレーすることを好まず、必ず左MFがそこに近づいて短い辺の三角形を作ることを求めた(システムは4-3-3。クライフいわく5ラインのシステムで、「DFライン」、「アンカー」、「左右のハーフ」、「左右のウイング」、「センターフォワード」という5ラインが形成される)。

 クライフの考えでは、サイドバックが単純にウイングにパスを出すと、ウイングは相手のプレスの格好の餌食になる。だが、そこにハーフが絡んで斜めのパスコースを増やせば、相手は捉えづらくなる。

【次ページ】 日本代表は単純な縦パスが多いのでは?

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