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ソチ五輪でのメダルラッシュの秘密!?
「マルチサポートハウス」が大活躍。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byKaoru Watanabe/JMPA
posted2014/04/01 11:35
ノルディック複合の日本人選手として20年ぶりとなる銀メダルとなった渡部暁斗。持久力、瞬発力などで高度なコンディショニングが試されるこの競技において、マルチサポートハウスの果たした役割は非常に大きかったという。
物資面だけでなく、運用面でも様々な工夫が。
幅広い支援を行なう拠点として、その準備は周到をきわめた。
昨年3月、スピードスケートの世界距離別選手権がソチで行なわれた。このとき、今回ほどの規模ではないが、トライアルとしてサポートハウスを用意していたのだ。
「そのときに、食料品でも大量に持っていくのは難しいとか、荷物も輸送会社が通常考えるスケジュールでは届かないことが分かりました。その経験をもとに、前倒しで送ったりしたことで、本番では苦労しなかった。もしトライアルをやっていなかったら難しかったのでは」(河合氏)
日本からの搬送だけではない。選手は沿岸部なら、シャトルバスで近くまで行ってそこから歩き、山間部はゴンドラとシャトルバスでマルチサポートハウスへ通った。そのバスの通行許可証をロシア関係機関や組織委員会から得るのも決して簡単なことではなかった。
そうした準備の積み重ねの上に、運営されていたのである。
銀メダルの渡部も、マルチサポートハウスを高評価!
数多くの選手が活用したマルチサポートハウスだが、中でも、ノルディック・コンバインドの選手たちは選手村には入らず、マルチサポートハウスに滞在しながら試合に出場した。コンバインドは、個人種目のノーマルヒル、ラージヒル、団体と3つの試合があったが、この競技ならではの特性と立地が理由だった。河合氏が言う。
「選手村のある場所の標高が、コンバインドの競技会場と比べて高かったんですね。コンバインドは持久系の種目もありますが、会場から選手村に戻ると回復に影響が出るわけです。マルチサポートハウスは競技会場に近いところにあるので、そこにいたほうが有利になるということでコンバインドチームから要望があり、日本選手団と相談してハウスの機能の1つとして泊まってもらうことになりました」
コンバインドでは日本勢20年ぶりのメダルとなる銀メダルをノーマルヒルで獲得した渡部暁斗は、マルチサポートハウスでの生活をこう語っていた。
「今までの遠征より全然いいですね」
日々の充実した生活も、メダルへとつながったのだ。
ロンドン五輪後に、競泳日本代表選手の中から、「これからも実施してほしいと思います」と熱望する声が起こるなどしたが、今大会後も、選手たちからは「コンディショニングがうまくいった」「いつも一緒のサポートしてくれている人がいて助かった」などの反響が寄せられているという。
好成績を残したソチ五輪では、通常のパフォーマンスを落とすことのない、あるいは上回る選手の姿が目立った。その要因には、マルチサポートハウスの存在があった。