Jをめぐる冒険BACK NUMBER
「2020年の昇格」と「ベテラン補強」。
FC岐阜がラモスと進める“長期計画”。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byGetty Images
posted2014/03/28 16:30
岐阜に巻き起こるサッカー熱の中心にいる、ラモス瑠偉監督。2020年のJ1昇格へ、どんな種をまき、どんな策を講じているのだろうか。
川口、三都主が語る、自分たちの「使命」。
自分たちに課せられた使命を、ベテラン選手たちも十分理解しているようだ。結果へのこだわりを強く意識するのは、川口だ。
「自分を必要としてくれるチームでやれる喜びは、今回本当に強く感じている。常に感謝の気持ちを持ってプレーしているけれど、それを結果に結び付けてこそ、恩返しになる」
三都主は、メンタル面の改善について指摘する。
「これまで岐阜と対戦したとき、弱いと感じなかったし、チームメイトになってみても、うまい選手はたくさんいる。それなのに下位に低迷していたのは、勝負弱く、負けグセが染み付いているからだと思う。まずはそうしたメンタルの部分、雰囲気を僕らで変えていきたいと思っている」
「日本にこんなボランチがいるのかな」という逸材も。
ベンチ入りの大半が30代の選手だが、若手が起用されていないわけではない。
大卒ルーキーの阿部正紀(22歳)が4試合続けてスタメンを張り、プロ2年目の清本拓巳(20歳)、下部組織から昇格した遠藤純輝(19歳)ら若きアタッカーも途中出場ながら出場機会を掴んでいる。
そのなかでも、ラモス監督が大きな期待を寄せるのがプロ3年目、冒頭で登場したボランチの水野(20歳)だ。
名古屋グランパスの下部組織からトップに昇格した水野は、昨年4月に期限付き移籍で岐阜にやって来た。昨季は10試合しか出られなかったが、今季は4試合続けてスタメン出場を飾っている。
「もうちょっと頭使え」という指揮官の辛辣なコメントは、もちろん期待の裏返し。「将来性あるボランチ。今の日本にこんなボランチがいるのかな」と賞賛も惜しまない。
その才能の片鱗は湘南戦でもうかがえた。2点を先行された前半終了間際に、得意のスルーパスでナザリトのゴールをアシスト。1-3で迎えた後半終了間際にも、ディフェンスラインの裏にボールを送って、ナザリトの2点目を演出した。
「宮沢さんや高地さんに言われるのはテンポですね。ドリブルで行くのか、パスを回すのか、その判断を一緒にプレーしながら、先輩たちから盗んでいきたい」
そう語った水野は「大勢の観衆の前でプレーするのにも慣れました。ナザの動きを見逃さなかったのは成長している部分だと思います」と言ってはにかんだ。
その笑顔は、渋いプレーとは裏腹に、初々しさの残る20歳の若者らしいものだった。