Jをめぐる冒険BACK NUMBER
「2020年の昇格」と「ベテラン補強」。
FC岐阜がラモスと進める“長期計画”。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byGetty Images
posted2014/03/28 16:30
岐阜に巻き起こるサッカー熱の中心にいる、ラモス瑠偉監督。2020年のJ1昇格へ、どんな種をまき、どんな策を講じているのだろうか。
ベテランがチームにもたらす「プロフェッショナリズム」。
岐阜が大きな転機を迎えたのは、昨年12月のことだ。地元紙の報道やライターの話によると、岐阜は1億4000万円の負債を抱え、消滅の危機に瀕していたという。そんなとき、ラモス氏を紹介し、1年前に続いて再び支援を申し出たのが、金融・不動産業の持株会社Jトラストの社長で、岐阜県出身の藤澤信義氏だった。
さらに、藤澤氏だけに頼るわけにはいかないと地元財界も協力を約束。債務超過解消にメドが立ち、強化費も得られたことで、ベテラン選手の大量補強に至った――というのが、大筋の流れだという。
湘南戦のスタメンの平均年齢は29.18歳。相手を6歳近くも上回っていた。「これはいくらなんでも高すぎやしないか」と思ったが、松永英機統括副本部長兼チーム統括部長によれば、今回の補強は未来への投資よりも、酸いも甘いも噛み分けたベテランである必要があったという。
その理由のひとつは、チームに「プロフェッショナリズム」を植え付けることにある。
「我々は今までもプロクラブとして活動してきましたが、ピッチの中でどういうプレーをすれば勝利につながり、なおかつお客さんに楽しんでもらえるか、ということを本当に理解していたかというと、足りない面があった。そこで、まずは真のプロ集団にならなければいけないと。それには真のプロ意識を持った選手に在籍してもらう必要があった」
チームの拠点、ファンの集まる場所を。
もうひとつは、プロに相応しい環境を整備し、サッカー文化を根付かせるためだ。
岐阜には現在、クラブハウスも専用の練習場もない。そのため、公共施設を点々としているが、練習グラウンドが変われば選手が身体に感じる刺激も異なり、疲労や違和感を残すことになる。そうした環境はプロに相応しいとは言えない。
また、ここに来れば必ず選手に会えるという場所ができれば、子どもたちが練習を見に来やすくなり、選手にサインをもらったり、記念撮影したりすることも容易になる。
「環境面の改善はクラブの力だけでなく、地域、行政、スポンサーも含めた多くの方の支援があってできるもの。我々ももっと提案していき、理解を得る必要がありますが、チームが注目を集め、なおかつ結果を出せればそうした機運も高まると考えている」