日本代表、2014年ブラジルへBACK NUMBER
怪我と移籍、2つの悩みを越えて。
齋藤学、W杯シーズンへ横浜で始動。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byAFLO
posted2014/02/21 10:50
天皇杯決勝のピッチには、吹っ切れた表情の齊藤学がいた。いつかブラジル、そして欧州へ羽ばたく時の準備は、横浜で着々と進んでいる。
「マリノスでやることはまだまだある」
マリノス残留を決めたのは、何もケガや体の状態ばかりではなかった。
下部組織からマリノスで過ごしてきた愛着もあるが、ここで成長できるという「直感」があったからだ。
「ACLをやれるというのもある。(昨季王者の)広州恒大が同じグループにいますからね。マリノスでやることはまだまだあると思ってます。得点数そのものもそうだけど、もっとチャンスに絡む回数を増やさないといけないし。
俊さん(中村俊輔)、ユージさん(中澤佑二)をはじめ、キャリアを積んできた人たちと一緒にやれることで得る経験は凄く大きい。もちろん、海外で得る経験も大きいとは思いますよ。でも僕は残る決断を下したし、それに自分の直感を全面的に信じていますから」
これからは、ブラジルW杯に向けたメンバー争いも本格化する。
齋藤はケガでベルギー遠征こそ離脱したものの、東アジアカップの活躍が認められて昨年9月のグアテマラ、ガーナ戦以降、コンスタントに招集されている。流れを変えられる個の突破力は、アルベルト・ザッケローニ監督も評価しているということだろう。
だが本人はあえてW杯を意識しないようにしているようだ。
「すべてはマリノスでの積み重ねが、(W杯に)つながるんだと思う。蛍(山口)、カキくん(柿谷曜一朗)、サコ(大迫勇也)たちとは東アジアカップで一緒に代表に入り始めたけど、俺の場合、フルの代表メンバーのなかで試合に出たのはガーナ戦の最後5分間ぐらいだけだし、みんなと違いますからね」
渡り鳥のカモメに、齋藤の今後をだぶらせてみる。
齋藤には2012年のロンドン五輪ではメンバーに選ばれながらも、自分を出し切れなかったという悔しい経験もある。
「五輪では守備をしっかりするところとか献身的なところばかりを意識してしまって、自分の良さというものをなかなか出せなかった。自分のことで言えば、不完全燃焼で終わってしまった感じしかなくて……。だからW杯では出るだけじゃなくて、出て活躍することに意味があると思っています。そのためにも先のことを意識したり、考えたりしないで、ここ(マリノス)でやれることを精いっぱいやっていきたい」
あとはマリノスで突き進んでいくだけ。
齋藤のニックネームはいずれも「メッシ」が絡む。「エヒメッシ」(愛媛FC所属時)「ハマのメッシ」に「和製メッシ」、そして「カモメッシ」……。
カモメは神奈川県の県鳥であり、港町横浜のイメージにもぴったりと合う。
渡り鳥のカモメに齋藤の今後をだぶらせてみる。
マリノスでしっかりと力をつけ、ブラジルを目指す。そしてその先に、欧州に羽ばたく機会がきっと訪れるに違いない。