野ボール横丁BACK NUMBER
斎藤佑樹、涼しい顔の裏に変化が。
新球シュートと真っ直ぐな“悔しさ”。
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2014/02/15 08:25
昨年は0勝に終わり、二軍でも失点が続いた斎藤佑樹。故障に回復の兆しが見られる今年4年目は勝負の年。新球シュートで生き残りをはかる。
久しぶりに真っ直ぐ「悔しい」と口にした変化。
その斎藤が、シュートの習得に本腰を入れたのだ。そこには、肩の故障で昨シーズンを棒に振り、プロ4年目の今季にかける斎藤の「本気度」が見て取れる。いつもどこか涼しげな顔をしている斎藤だが、内面は、それだけ必死なのだ。
この日は40球中5球、シュートを投げた。だが紅白戦だけに、どこか遠慮があった。これからはオープン戦が始まる。斎藤は「もっともっと行きたいですね」とシュートを自家薬籠中の物とすべく、さらなる意欲を見せた。
このシュートで斎藤がどう変わるのか。それがひとつ目の希望だ。
もうひとつの希望は、斎藤の悔しがり方だった。この日の斎藤は2回を投げて、2安打1失点。この1失点について、斎藤は「悔しい」と何度も口にした。
「0点で行きたかったので、悔しいです」
斎藤がここまで真っ直ぐに悔しがるのは久しぶりのことだ。昨年は、相手と戦っているというよりも、自分と戦っている様子だった。だから、失点しても、意識が相手に向くことはなかった。
「いろいろ試しながらやっている段階なので……」
「指にかかったボールは打たれてないので」
「結果はよくなかったですけど、得るものはあった」
自分を出し切れていないから、そんな苛立ちをなだめることに精いっぱいだったのだろうが、単なる強がりのように聞こえるときもあった。
「ここに合わせて、プレッシャーをかけてきた」
この日の登板は昨年11月からすでに決まっていた。それだけに、斎藤の中には深く期するものがあった。
「ここに合わせて、プレッシャーをかけてきた。それだけに緊張感もあったし、高まる気持ちを抑えるのに必死だった。今日は僕の100パーセントを出したつもり。課題も見つかりましたけど、それはこれからつぶしていけばいい」
まだ紅白戦だからという逃げ場を封じ、がむしゃらに結果を求めに行く姿に、これまでにないたくましさを感じた。自分の敗北を認め悔しがることができるということは、そこまで自信が回復している証拠でもある。
ただし、本人が「これからいろいろな戦いが始まる」と言っているように、2つの希望がふくらむか、しぼむかは、まだまだこれからの話だ。