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初テストで王者レッドブルが苦戦。
新時代幕開けを象徴する大事件。 

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尾張正博

尾張正博Masahiro Owari

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posted2014/02/08 08:15

初テストで王者レッドブルが苦戦。新時代幕開けを象徴する大事件。<Number Web> photograph by AFLO

テスト初日でわずか3周、計測タイムなしに終わったレッドブル。4日間の合計も21周で、参加チーム中、最低の周回数だった。

昨年までとはERSの比重が大きく異なる今年のF1。

 昨年までもレッドブルはKERSに関するトラブルを何度か発生させている。だが、レッドブルにとってKERSのトラブルが致命傷になることはこれまでなかった。しかし、今年は違う。それはエネルギー回生システムがラップタイムに寄与する割合が大幅に増えたからだ。

 ERS-Kは、昨年までのKERSの2倍となる2MJのエネルギーを回収。使用できるエネルギーも1周あたりに昨年までの400KJ(0.111kWh)から4MJ(1.112kWh)と、昨年までの10倍にも達する。

 これを時間に換算すると、1周あたりこれまで7秒弱しか使用できなかったのが、約33秒間使用可能となる。4MJのエネルギーを毎周使用することはできないものの、使用できるラップでは1周の約3分の1以上の部分で、ERS-Kを活用できる。そのパワーは約160馬力。今年の1.6リッターV6ターボの馬力は約600馬力だと言われているから、この約160馬力を加算できるかどうかは重要なテーマである。

 昨年まではKERSのトラブルに見舞われれば、KERSを使用しないという選択肢も可能だったが、今年は回生エネルギーシステムがトラブルで使い物にならなくなると、大きなパフォーマンスダウンに直結する。ヘレスでのトラブルがレッドブルにとって、これまでにない深刻なものとなったのは、そのためだった。

 レッドブルにパワーユニットを供給しているルノー・スポールF1のゼネラル・マネージャー代理兼テクニカル・ディレクターのロブ・ホワイトも、新時代のF1におけるパワーユニットの重要性を理解している。

「新規約で重要な点は、エンジンの小型化であり、ターボの有効活用だが、それと同時に運動回生エネルギー(ERS-K)と排気ガスによって生じる熱エネルギー(ERS-H)の回収と再利用だ」

空力の時代が終わり、エンジンが主役になるか。

 ヘレスでトラブルに見舞われたのはレッドブルだけではない。初日にはマクラーレンが1度もコースインできなかった。3日目までに1日50周以上を走り込めたチームはメルセデスAMG、ザウバー、フェラーリ、マクラーレンの4チームだけ。そのため、タイムも低空飛行のままだ。

 昨年の2月に同じヘレスで行われたテストでトップタイムをマークしたフェリペ・マッサのタイムは1分17秒879。今年のヘレスのトップタイムであるマグヌッセンですら、まだ5.4秒も遅い。

 空力によってスピードが支配されてきた近年のF1は、いま新しい時代に入った。それはエンジンを中心としたパワーシステム下での競争だ。今回ヘレスで、空力の天才、エイドリアン・ニューウェイがデザインしたマシンに起きた問題は、ただのトラブルではない。新時代幕開けを象徴する事件として、レッドブルだけでなく、多くの関係者にインパクトを与えたのではないだろうか。

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