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初テストで王者レッドブルが苦戦。
新時代幕開けを象徴する大事件。 

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尾張正博

尾張正博Masahiro Owari

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posted2014/02/08 08:15

初テストで王者レッドブルが苦戦。新時代幕開けを象徴する大事件。<Number Web> photograph by AFLO

テスト初日でわずか3周、計測タイムなしに終わったレッドブル。4日間の合計も21周で、参加チーム中、最低の周回数だった。

 2014年シーズンへ向けたウインターテストが1月28日解禁された。

 その舞台となったスペイン・ヘレスで多くの人々を驚かせたのは、変更されたレギュレーションに適合させるためにデザインされたユニークな形状の新車だけではない。4連覇中のディフェンディングチャンピオン、レッドブルが抱えた苦悩は、新車に装着されたノーズ以上にインパクトがある事件だった。

 FIA(国際自動車連盟)は今年、ノーズなどの車体に関するレギュレーション以外にも、多くの技術的変更を行っている。その中でもっとも大きな変更といえるのが、エンジンをはじめとしたパワーユニットに関する新規則だ。昨年までの2.4リッターV8自然吸気から、今年は1.6リッターV6ターボへと大きく変身。さらにこのターボエンジンに2種類のエネルギー回生システムが組み合わされた。ひとつは昨年までと同様、ブレーキを利用した運動エネルギー回生システムで、もうひとつは今年初めて導入される熱エネルギー回生システムだ。

 これまでKERS(カーズ)と呼ばれていた運動エネルギー回生システムは、Kinetic Energy Recovery Systemの略である。しかし、今年はKinetic(運動)だけでなく、熱(Heat)も利用したエネルギー回生システムとなるため、前者をERS-K、後者をERS-Hと呼び、それら全体の呼称としてはERS(アーズ)が用いられている。そして、ヘレスのテストで、レッドブルが見舞われたトラブルは、このERSに関するものだった。

ベッテルがコースインするも、計測タイムなし。

 テスト初日、マシンの各部を確認するインスタレーションラップ後に、再びコースインしたセバスチャン・ベッテルだったが、コントロールラインを通過することなく、ピットイン。その後、もう1度、コースインしたが、すぐさまガレージに戻され、わずか3周、しかも計測タイムなしに終わった。

 トラブルは2日目以降も改善されず、2日目8周、3日目3周、そして最終日の4日目は7周走ってコース上にストップ。いかにトラブルが深刻だったかは、最終日は午前中でテストを自ら切り上げて、サーキットを後にしたことでもわかる。

 4日間のテストでレッドブルがマークしたベストタイムは2日目のベッテルの1分38秒320。これは3日目にトップタイムを出したマクラーレンのケビン・マグヌッセンの1分23秒276から15秒も遅く、過去4年間、チャンピオンチームが味わったことのない屈辱だった。

【次ページ】 昨年までとはERSの比重が大きく異なる今年のF1。

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