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ドジャースに日本人の名スカウトあり。
20年後を見据えるMLB流選手育成術。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2011/01/10 08:00
抜群の制球力を誇る明大の西嶋一記投手。カーブ、スライダー、スクリューボールなどを速球と同じフォームで投げ分ける
選手の評価は「40歳の時にどうなっているかで決まる」。
「180cm後半、90kg、それくらいになれば、90マイルは投げられるようになる。3年後にそうなれば、日本で言えばドラフト上位候補と言われる選手ですよ」
小島はそう判断し、西嶋と高野がドラフトで指名漏れしたのを受けて、契約を実現させたのだ。
とはいえ、小島は彼らに今すぐの結果を求めているわけではない。日本の発想では大学生だと即戦力という見方が強いが、彼らに期待しているのは長期的な実力である。
「彼らに言っているのは早くメジャーに上がることが重要じゃないんだ、それを競っているんじゃない、ということ。むしろ、40歳で野球ができるような選手になるべきだ、とね。一度上がったら、二度と落ちないくらいのものを身につけてから、上がっていくのがいい。西嶋の場合は同級生が日本で注目されているけど、40歳の時にどうなっているかで野球選手としてどうなのかが決まる。ドジャースでずっとやるかどうかは難しいことかもしれないけど、メジャーの29球団は必ず見ているから」
あまりにも異なる日米の選手育成事情。
育成の面において、日本とアメリカとでは大きな違いがある。
育成枠が創設され、多くの選手がプロの世界に飛び込めるようになった日本だが、しかし、そのことが育成システム自体の向上を意味していたわけではない。新人が1月から投げ込みを行い、故障を抱えたり不調に陥ってしまうというのは、何も昨年の二神一人(阪神)や雄星に限ったことではないのだ。
「今、トレーニングをやらないと間に合わないんですよ。根を張らないといけないこの時期に、それをしないと30歳も、40歳もない」
少なくともこの二人に関して、小島はじっくり育てていくと明言している。