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ドジャースに日本人の名スカウトあり。
20年後を見据えるMLB流選手育成術。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2011/01/10 08:00
抜群の制球力を誇る明大の西嶋一記投手。カーブ、スライダー、スクリューボールなどを速球と同じフォームで投げ分ける
練習に取り組む姿勢を見て、5年後の成長を見極める。
小島のスカウト活動は、当然だが試合でのプレーを見るだけでは収まらない。
普段の練習時にグラウンドまで足を運び、その選手が野球に取り組む姿勢や、指導者からの生の情報を収集し、選手を見極めるのだという。
「選手を見ていると、性格までもが透けて見えてくる。そしたら来年は、3年後は、5年後は……こういう選手になっていくんだろうなというのが見えてくる」
今回の件で言えば、西嶋はまさにそうだった。
横浜高校時代の西嶋を知っていた小島が彼の成長を感じ始めたのは大学3年春のころ。明大の練習を視察するうち、一目置くようになった。
「練習を見れば選手が目的意識を持って取り組んでいるのかどうか分かる。その頃の彼は自分からガンガン練習に取り組んでいた。練習態度が違ったんですよね。目が違うなぁって。これだったら、左だし、背もあるし、いいボール投げられるようになるだろうなって思った。そしたら、そのとおりになって、3年秋のリーグ戦で防御率1位になったんですよ」
高卒の高野を評価したポイントは身体のポテンシャル。
一方の高野は高校1年冬にその姿を見て、「柔らかい腕の振りをする」との印象を持った選手である。しかし、大学生の西嶋とでは高校生の高野の評価は少し違っている。
「高野の場合はそんなに印象が変わってないんですよね。高校3年間はあまり活躍してない。プロから指名されないだろうなって思っていました。努力もしていないのに、結果が出ずに焦って無理して、怪我をする。負のスパイラルにはまっていた選手なんです。でもね、実際、完璧な選手っていないですよね。僕らは巧い選手を獲りに行っているんではなくて、運動能力、身体の強い選手を獲りに行っている。今の彼はむしろ欠点の方が多いくらいだけど、手足が長くて柔らかいという特長がある、この欠点を半分くらい減らすことができただけでも、かなりのピッチャーになる」
身長184cm、78kgの高野は細身の体型だが、これがドジャースの綿密に計画されたファームシステムの中で鍛えられれば、期待も大きくなるというものだ。