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<引退した名選手たち> 歩き始めた第2の人生。~朝青龍、清水宏保らの引き際~ 

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

PROFILE

photograph byTakuya Sugiyama/Koji Takano(JMPA)/Takao Yamada/KYODO

posted2011/01/07 06:00

<引退した名選手たち> 歩き始めた第2の人生。~朝青龍、清水宏保らの引き際~<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama/Koji Takano(JMPA)/Takao Yamada/KYODO

2010年に競技生活にピリオドを打ち、“第2の人生”をスタートさせたアスリートたち。左上から時計回りに清水宏保(スピードスケート)、千代大海(大相撲)、大山加奈(バレーボール)、薮恵壹(プロ野球)、内柴正人、谷本歩実(ともに柔道)

元木由記雄と薮恵壹、朝青龍の引き際。

 ラグビー界の鉄人、元木由記雄は38歳で競技生活に終止符を打った。19歳で日本代表に選ばれて以来、歴代最多の79試合に出場。高校、大学、神戸製鋼で日本一。現役であることにこだわり続け、衰えを感じさせぬプレーを見せてきた元木の引退の理由は、「体のケアに時間がかかってベストなプレーができない」こと。38歳に至るまでの活躍は、高い意識あればこそであった。現在はU-20日本代表のコーチとして次世代の指導にあたる。

 かつて阪神のエースとして活躍した薮恵壹もまた、現役であろうとし続けた一人だった。阪神からメジャーリーグのアスレチックスに入団した薮は、自由契約となったあとも、「投げることに関しては誰にも負けたくない」という強い自負とともに、投げる場を求め続けた。メキシコへ渡ったこともある。昨年、楽天の入団テストに合格し日本のマウンドに復帰したがシーズン後戦力外通告を受けた。古巣、阪神の二軍投手コーチとしてスタートを切る。

 2010年の引退と言えば、朝青龍も忘れるわけにはいかない。数々の騒動で大相撲を揺るがし、最後は暴行問題を引き金に突如引退した異色の横綱であった。しかし、幕内優勝25回は歴代3位。長く一人横綱を守った功績も、決して小さくはない。

大関在位歴代最多の千代大海と大山加奈のバレーボール人生。

 大相撲では、千代大海もまた、髷を切ることになったひとり。大関在位は歴代最多の65場所。一方でカド番も史上ワーストの14度。「大関にふさわしいのか」。ときに非難も浴びた。繰り返す怪我に苦しみながらも、粘り強くしのいできたが、体力の衰えには勝てなかった。

「いつ大関から落ちるか不安でした。正直、土俵に上がるのが怖くなりました」

 九重部屋付きの親方として後進の指導にあたる。

 千代大海にかぎらず、アスリートにとって怪我はときに致命傷となる。

 大山加奈のバレーボール人生は、腰痛との闘いでもあった。「この怪我で復帰した選手はいない」と医師が宣告する状態から、懸命のリハビリで復帰したこともあった。

「たくさんのことを教えてくれ、たくさんの素敵な出会いをもたらしてくれたバレーボールに恩返ししていけるような人生を歩んでいきたい」。言葉のとおり、引退後は日本バレーボールリーグ機構に勤務し、普及その他の活動に奮闘している。

 長年にわたってよく戦い、大きな決断を下した今なお、競技への思いを口にする彼らは、競技とかかわりながら、第2の人生を歩む。

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