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セードルフが目指すサッカーとは?
カカはできず、本田にはできるプレー。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byGetty Images
posted2014/01/24 11:20
ウディネーゼ戦で後半37分から出場するも、2分でイエローカードを出された本田。過密日程のせいか、万全のコンディションではまだプレーできていないようだ。
現在、監督が目指すプレーができているのは本田だけ。
前試合のベローナ戦では、本田が“前に行くフリをしてから急ストップして逆を突く”といった動作を繰り返していたため、中盤にパスを呼び込むことができていた(まわりがその動きに気がついても、まだ出す習慣がなく、パスが来ないシーンも多かったが)。
しかし、この日トップ下に入ったカカはセカンドトップ的に前に残る傾向があり、中盤のパスまわしにあまり労力を割こうとしない(それが分断サッカーの原因のひとつになる)。セードルフが目指すサッカーに必要なのは、受けて出して動く、受けて出して動くという作業だろう。今のミランで、すでにその動きができているのは本田だけのように思う。
本田の公式HPの有料コンテンツ「KEISUKE'S REVIEW」を見ると、この背番号10は自分こそがスタイル移行に必要な存在だと自覚していることがわかる。イタリアサッカーの美学にも関わるテーマだけに、とてつもない挑戦だ。
11分だとしても、本田にはチームを救うことが求められた。
本田はメッシやクリスティアーノ・ロナウドのように、ひとりで組織を破壊できるほどの絶対的な力があるわけではない。組織の中でまわりを生かし、自分を生かし、なおかつ組織全体の理念を高められることに、他の選手にはないアイデンティティーがある。
厳しい見方をすれば、ウディネーゼ戦でプレー時間がロスタイムを含めて約11分間しかなかったとしても、本田にはチームを救うことが求められた。ファーストプレーのトラップでボールが浮いてしまったように、まだサンシーロの芝生に慣れておらず、それが奇跡を引き起こせなかった一因になったようにも思う。ただし、チームメイトに本当に必要なことを気づかせ、さらに監督とコミュニケーションを取り、進化へのターニングポイントにできれば、この敗戦は決して無駄にはならないだろう。