Jをめぐる冒険BACK NUMBER
U-22アジア選手権、得点王を狙う
手倉森ジャパンの小さなエース。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byGetty Images
posted2014/01/20 16:30
10番を背負う、小さなリーダー中島翔哉。東京VからFC東京への移籍はホームを同じくする禁断の移籍だが、本人にとってはJ1への大きなステップアップになる。
コンディションは万全。視線は既に欧州へ。
自ら手を挙げてアピールしたように、コンディションも万全だ。シーズンが終わってから、ほとんど休まず身体を動かしてきたため、シーズン中よりも動けるくらいだと本人は言う。
「この大会が自分にとってどれだけ大きなものなのか分かっている。この大会はいろんな人が見ている。そこは絶対に意識するところだと思うし、将来はヨーロッパでプレーしたいので、今のうちにいろんな人に知ってもらい、成長していく姿を見てもらいたい。これから圧倒的な力を付けていくためにも、この大会ですべてを持ち帰りたいと思います」
その言葉には、強い決意がにじみ出ていた。
京都の原川も、確かな働きで評価を高めた。
中島と同じくグループリーグ3試合に出場した原川力(京都)も、チームの決勝トーナメント進出に大きく貢献したひとりだ。
先制ゴールを決めたイラン戦と、後半から出場したクウェート戦ではボランチに、チームが4-3-3を採用したオーストラリア戦ではインサイドハーフに入って、舵取り役やバランサーとして存在感を示した。
手数をかけないシンプルなボールさばきでリズムを作り、絶えずサポートに向かったり、バックステップでポジションを取り直したりする動きもスムーズだ。派手さはないが、ポジションバランスにも長けたところも好感が持てる。
本人の自己評価は「パスやポジション取りだけでは満足感が得られないんです。ここまで試合を通して満足いくプレーができていなくて、思っているプレーができたのは得点のシーンだけ。反省するところばかりです」と厳しいが、指揮官からの信頼の高さは「原川のスペースを埋める動きが利いていた」「理解力の高い選手」という賛辞からも窺える。
クラブでの鬱憤を晴らすかのような今大会のプレー。
中島と原川のふたりに共通するのは、環境を変えて新シーズンを迎えることだ。
中島は'12年に東京Vと晴れてプロ契約を結び、21試合に出場したが、先発出場は9試合にとどまった。
「楽しんでできた部分もあったし、難しい部分もあった。でも、過ぎたことを振り返ってもしょうがない。先のことしか見ていないので」という言葉には、決して満足していない様子がうかがえる。もっと試合に出てサッカーを楽しみたい――。そんな鬱憤が、今大会のプレーにつながっているのかもしれない。