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MLBとの交渉で露呈した球界の体質。
NPBと選手会の協力構築が最優先だ。 

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菊地慶剛

菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi

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photograph byNaoya Sanuki

posted2013/12/22 08:01

MLBとの交渉で露呈した球界の体質。NPBと選手会の協力構築が最優先だ。<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

移籍問題の渦中にいる田中と、選手会長の嶋。互いのことを誰よりも考えた結果が、MLBの怒りを買ってしまうとは、なんとも皮肉な結果となってしまった……。

選手にとっても、移籍が容認されない可能性が高まった。

 もちろん田中のような選手の場合、旧制度では上限金を上回る入札金額が予想される人気ぶりで、前述通り複数球団の競合は必至の状態。選手会の期待通り複数球団との直接交渉が可能になる。

 しかし、これまでポスティングシステムを利用してMLB球団から入札を受けた日本人選手は13人いるが(そのうち岩隈久志投手と中島裕之選手は交渉決裂)、今回設定された上限2000万ドルを超えたのは松坂大輔投手、井川慶投手、ダルビッシュ有投手の3人しかいない。

 つまり新制度を利用したところで、すべての選手が複数球団と交渉可能になるわけではないということになる。

 さらに言えば、譲渡金に上限ができてしまった影響で、楽天のケースを見てもわかるように、田中クラスの選手(例えば広島の前田健太投手など)を抱える球団が新ポスティングシステムを利用してのメジャー移籍を容認しづらい状況を生み出したともいえる。

 また希望譲渡金をNPB球団が設定できるようになったことで、設定金額によっては低額の入札金で済んでいた選手たちの入札自体がなくなる可能性も捨てきれないわけで、むしろ新制度は選手にとってもデメリットが少なくないはずだ。

 そもそもNPB選手会は選手たちの機会均等を目指す組織であるはずだ。

 そういった意味では、旧ポスティングシステムが発効されて以降、同制度を利用してメジャー移籍を容認する球団と、認めない球団が明確になっている現状では、今後も選手間の格差は消えることはないだろう。

実際に「使える」制度にする努力ことが今必要だ。

 むしろ制度の中身に異議を唱えるのではなく、ポスティングシステムを選手誰もが利用できる制度にする努力をすることが喫緊の課題なのではないだろうか。

 本来なら選手会が主張するようにポスティングシステムなど廃止し、MLBのようにFA取得期間を6年に短縮するのが最も理想的な形であることは間違いない。

 だが、自分たちの主張を押し通しているだけでは何も進まない。真剣に自分たちの主張を受け入れてもらうためには、交渉相手を納得させる改善案を自ら提示すべきだろう。

【次ページ】 選手会とNPB、双方の関係改善で協力体制を。

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