ブックソムリエ ~必読!オールタイムベスト~BACK NUMBER
「アメリカの宝」が綴った、
ニューヨーク野球三国志。
~『来年があるさ』を読む~
text by
馬立勝Masaru Madate
photograph bySports Graphic Number
posted2013/12/25 06:00
『来年があるさ』ドリス・カーンズ・グッドウィン著 松井みどり訳 ベースボール・マガジン社 1900円+税
ニューヨークの下町、ブルックリン。時は1950年、7歳の女の子が地区の教会で神父に告白した。「ドジャースのロイ・キャンパネラ捕手の話が聞きたくて、他の教会に入りました」。「礼拝なしなら、よろしい」。寛容な言葉に女の子は「人がけがをすればいいと願いました」と続けた。
「ヤンキースのアリー・レイノルズ投手が腕を折ればいいと。ジャイアンツのアルビン・ダーク遊撃手が膝を痛め、ヤンキースの乗った列車が故障しろと……」。神父はにやりとして、「私もドジャース・ファンだが、それで勝っても嬉しくない。ライバルのけがなど願わず、共にドジャースのために祈ろうじゃないか」。