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ステロイド時代と殿堂入りの資格。
~MLBの新たなレジェンドは誰だ~
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2013/12/21 08:01
“投げる精密機械”と呼ばれ、メジャー通算23年間で355勝を挙げたマダックス。
新しく殿堂入りする選手の発表が近づいてきた。殿堂とは、もちろん全米野球の殿堂のことである。BBWAA(全米野球記者協会)のメンバーによる投票結果は、2014年1月8日に公表されることになっている。
今回の注目点は、1999年以来の3選手入所が実現しそうなことだ。有力と見なされているのは、グレッグ・マダックス、トム・グラヴィン、フランク・トーマスの3人。
殿堂が設立された当初、大量入所は珍しくなかった。1936年の第1回投票では、タイ・カッブ、ウォルター・ジョンソン、クリスティ・マシューソン、ベーブ・ルース、ホーナス・ワグナーの球聖5人が選ばれている。'47年にも、ミッキー・カクレイン、フランキー・フリッシュ、レフティ・グローヴ、カール・ハッベルの4名がBBWAAによって選出された。いずれも伝説上の選手たちだ。
ただ、そのあとは数が減った。'60年代以降、BBWAAによる3選手入所は、'72年、'84年、'91年、'99年の4回だけだ。'99年に殿堂入りしたのは、ジョージ・ブレット、ノーラン・ライアン、ロビン・ヨーントの3選手だった。入所資格のボトムラインである75パーセント以上の票を得るのはなかなかむずかしい。
今年の2人の投手は、受賞が濃厚。
今回、満票もしくはそれに近い票を獲得するのはマダックスだろう。通算355勝は存命中の投手のなかで最多だし、大リーグ史上初めて4年連続サイ・ヤング賞受賞(のちにランディ・ジョンソンに並ばれたが)の快挙も達成している。さらには、17年連続15勝以上とかゴールドグラヴ18回とか、気の遠くなるような記録がずらりと並ぶ。
マダックスとともにブレーヴスの黄金時代を支えた左腕グラヴィンの受賞も濃厚だろう。通算成績が305勝203敗。サイ・ヤング賞2回。20勝以上が5回(これを達成した左腕投手は、ウォーレン・スパーン、レフティ・グローブ、エディ・プランク、スティーブ・カールトンの4人しかいない)。三振奪取率こそ5.32/9回と低かったが(300勝投手のなかでは史上最低)、裏を返せば、これは打たせて取る投球術が抜群だったことの証明になる。