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<アフリカ最強国、新指揮官との歩み> コートジボワール 「ドログバを本気にさせた男」
text by
マーク・グリーソンMark Gleeson
photograph byGetty Images
posted2013/12/13 06:01
それでもサッカー協会の会長は、ラムシ続投を決めた。
ただ彼が幸運だったのは、多くのアフリカ各国の監督と異なり、協会と良好な関係を築けていたことだ。ラムシを支持する同国サッカー協会のオーガスタン・ディアロ会長は続投を決断。これを意気に感じた指揮官はチームの立て直しに着手する。引き続き若手を積極的に起用する一方、ドログバら盛りを過ぎた黄金世代との確執を囃し立てるメディアにはそれを完全に否定した上で、彼らがチームを牽引すべき存在であることを強調した。
CANでベテランを起用しなかった場面については「あくまでフィットネスの問題」として、「W杯予選にもフィジカルがきちんと整っている選手を起用する」と明言。そして選手たちには、「それぞれが持つ才能をチームに役立ててほしい」と呼びかけた。
すると、ドログバは監督のその言葉に挑むように、クラブでハードなトレーニングを積み身体のキレを高めて先発の座を奪い返す。クラブではチャンピオンズリーグ制覇やプレミアリーグ優勝など華やかな経歴を歩んできたが、代表のシーンではいまだに無冠。キャリアの最終章を送る35歳にとっては、現実的なラストチャンスだ。このまま終われるはずなどない。
かくして圧倒的な力をもつ猛獣たちが心を一つにした「エレファンツ」は難敵モロッコと同居するグループを無敗で駆け抜け、セネガルとのサバイバルも制した。
「ブラジルW杯出場は我々のプライドを満たしてくれる」
指揮官は言う。
「(プレーオフ)初戦の終了間際に不用意な失点を喫したことで、選手たちを厳しく叱った。それが落とし穴になる可能性もあったからだ。しかし、彼らは私の言葉に見事に応えてくれた。我々の突破は妥当なものだと思う。ブラジルでのW杯に出場することは、私たちのプライドを満たしてくれる」
ラムシはまず、一つ目のミッションを果たした。手腕に疑問を投げかける者たちには、言葉を返す代わりに芝生の上で答えを示してみせた。就任後に喫した公式戦での敗北は3つ。及第点と言えよう。ただし、彼の真の評価は本大会で決まることになる。ラムシを信じて代表を託した協会、そして指揮官の下で結束した選手たちと共に、同国史上3度目の挑戦で初のグループ突破を果たすことができれば、また彼本来の笑顔に会えるだろう。