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「とにかく前へ」でベルギー撃破!
長谷部が語る“本当にやりたいこと”。 

text by

木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

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photograph byGetty Images

posted2013/11/20 11:25

「とにかく前へ」でベルギー撃破!長谷部が語る“本当にやりたいこと”。<Number Web> photograph by Getty Images

「結果がついてきたのは嬉しいですね。チームの進む方向が間違っていないことを再確認できました」と試合後に語った長谷部。

「視野が狭くなっても、みんながパスコースを作ってくれる」

 吉田は試合中に声を張り上げて、味方に指示し続けていたのだろう。かすれ声を絞り出した。

「やっぱ(香川)真司とか本田さんとか、パスコースにしっかり顔を出してくれるんでね。自分がボールを持ち上がれるのは、たとえ視野が狭くなっても、みんながパスコースを作ってくれるというのが大きいかなと思います。前半は中2日の影響もあって、みんな足下でもらう回数が多かったですけど、後半は裏に抜ける動きが多くなった。だからパスを出しやすかったです」

 もちろん何事もやりすぎは良くなく、両サイドバックが同時にオーバーラップして、センターバックに負担がかかる場面もあった。前半15分の1失点目のシーンが、まさにそうだ。もし両サイドバックのどちらかがDFラインに残っていれば、GK川島永嗣が右サイドに飛び出す必要はなかったかもしれないし、もしくは酒井高が余裕を持ってクリアできていたかもしれない。

 だが、今はまだチームを完成させる必要はないだろう。前へ、前へ行くという意識を再び取り戻せたことに大きな価値を見出すべきだ。

失うものが出来てぼやけた「前へ、前へ」の精神。

 ザックの初戦となった2010年10月のアルゼンチン戦は、まだ失うものがなく、さらに教えられることのすべてが新しく、勇気に満ちたプレーができたのはある意味当然だった。

 それから日本代表はアジアカップを制し、さらにW杯予選で順調に勝ち点を獲得していったことで、失うものができてしまった。基本の反復練習にもマンネリを感じざるをえず、気がつけば最初に持っていた「前へ、前へ」の精神がぼやけていた。

 しかし、今年10月の東欧遠征で2連敗したことで危機感が爆発し、その経験は激痛をもたらしたが、しがらみをリセットするきっかけを与えた。

 長谷部は言う。

「あの時うまくいかなくて、チーム全員が『自分たちがやろうとしているのはこれじゃないんだ』と再確認できた。そういう意味では、あの10月の遠征も、負けて良かったとは言わないですけど、悪いところが出たという意味では良かったと思います」

 また油断すれば、いつ「前へ、前へ」の精神を失ってもおかしくない。高い目標を掲げているがゆえに、思わぬ壁にぶつかることもある。だが、2014年W杯の最大のダークホースと言われる気鋭の強国に勝った記憶と自信は、そう簡単に薄れるものではない。

 原点回帰――。今回のベルギー遠征を表すのに、これほどふさわしい言葉はないのではないだろうか。

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